消化器外科

当科について

科の特色・紹介

当院は、日本外科学会、日本消化器外科学会、日本食道学会食道外科、日本肝胆膵外科学会高度技能(A)認定施設です。

地域がん診療連携拠点病院の役割を担うべく、消化器 ( 食道、胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓、胆道 )のがんの手術を中心に行っています。

大阪赤十字病院 消化器外科では、「手術支援ロボット da Vinci(ダヴィンチ)の最新鋭機Xiを用いた手術(食道がん・胃がん・直腸がん)」を保険診療で受けられます!

内視鏡手術支援ロボット(手術支援ロボットともいいます)とは、従来人間の手で直線的な機器を操って施行していた内視鏡手術(胸腔鏡手術・腹腔鏡手術)に対し、関節機能などを有したロボットをコンピューター制御下に操作する事により精密・精細に手術を行なえるようにするために開発された医療機器です。根治性(がんの治せ具合)と機能温存(生活の質の担保)というトレードオフの関係にある命題を両立でき、手術中の出血量が少ない、手術後の回復が早い、などの利点も考えられます。

大阪赤十字病院消化器外科では、ロボット支援下手術の経験が豊富な指導者である金谷誠一郎部長(食道・胃)と野村明成副部長(直腸)の指導下に食道がん・胃がん・直腸がん・膵臓がんに対するロボット支援下手術を開始し、2021年7月現在で302件のロボット支援下根治手術(食道46、胃64、膵臓4、鼠径ヘルニア4、直腸184)を行ってまいりました。食道・胃・直腸の3領域ともに指導者(プロクター)がおり執刀ライセンスを発行できる数少ない病院のひとつです。鼠径ヘルニア、結腸がんに対するロボット支援下手術も自由診療下に行なっております。

当院で使用している最新鋭の内視鏡手術支援ロボット(da Vinci Xi)については、当院ホームページも御参照ください。

手術支援ロボット da Vinci(ダヴィンチ)ホームページ

治療実績、手術実績(令和2年)

食道切除術 32(32)
胃全摘術 21(21)
幽門側胃切除術 63(63)
噴門側胃切除術 10(10)
結腸切除術 139(133)
直腸前方切除術 87(86)
直腸切断術 10(10)
炎症性腸疾患 5(5)
肝切除術(葉切除以上) 9(1)
肝切除術(区域・亜区域切除) 13(8)
肝切除術(上記以外) 37(30)
膵頭十二指腸切除術 13(1)
膵体尾部切除術 12(9)
胆嚢摘出術 243(224)
虫垂切除術 96(85)
ヘルニア根治術 173(113)

( )は、うち低侵襲手術(腹腔鏡あるいはロボット手術)

ロボット手術(再掲)

食道がん 16
胃がん 19
直腸がん 61
上部消化管外科について

ア.胃がんに対する手術について

胃癌に対しては、従来開腹手術が行われていましたが、この10年ほどで、早期胃癌を中心に腹腔鏡下手術が行われる様になりました。腹腔鏡下胃切除は、日本胃がん学会による「胃がん治療ガイドライン」では、早期胃癌に相当するStageⅠ症例でのみ日常診療の選択肢になりうるとされています。進行癌に対する腹腔鏡下手術に関しては、多くの臨床試験が行われ、韓国や中国では進行癌に対しても開腹手術と遜色のない結果が得られており、国内の臨床試験の結果により、標準治療の一つとなることが期待されています。当科では、原則として進行がんや開腹手術を受けられたためにお腹の中に癒着が予想される方も含めたすべての胃がん症例に対して腹腔鏡下あるいはロボット支援下胃切除を第一選択としています。

10年以上の実績があり、日本内視鏡外科学会の技術認定医も複数名在籍し、進行がんや食道浸潤症例にも万全の体制で臨んでいます。

以上の低侵襲手術に加え、ステージⅡ以上の進行胃がんに対しては、術前あるいは術後に化学療法を併用した集学的治療を積極的に進めています。

イ.食道がんに対する手術について

食道がんに対しても、ロボット支援下手術も積極的に行いながら、胸腔鏡・腹腔鏡での食道切除術を原則としています(図2、3)。頚部・胸部・腹部の 3 領域リンパ節郭清を行いながらも、1~2cm長の創数カ所だけで手術を行うため、術後の回復も早く、通常、術後2週間程度で退院/社会復帰が可能です。また、ビデオスコープを用いた精細な操作のおかげで、合併症の発生も少なくなっています。

なお、ステージⅡ、Ⅲの症例に対しては、術前化学療法や術前化学放射線療法を行った上での手術を行い、ステージⅣに対しては化学療法や放射線療法を併用した集学的治療も積極的に行っています。

下部消化管外科について

ア.大腸がんに対する治療方法

一部の早期大腸がんを除き、ほとんどの大腸がんに対する根治的な治療は「リンパ節郭清を伴う外科治療」が第一選択です。がんの進行度に応じ、手術前後に抗がん剤治療や放射線治療を追加する場合があります。消化器内科・腫瘍内科・放射線科・病理診断科と綿密な計画を立て最善の治療を提供します。また、がんにより大腸が完全に詰まった場合、大腸内の便を排出させる処置(大腸ステントや経肛門イレウス管の留置)により、人工肛門を回避し手術を1回で終了する工夫もしております。

イ.大腸がんに対する腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術は、腹部に1cm前後の穴を開け炭酸ガスで腹部を膨らませ、内視鏡と細長い手術機器をお腹の中に入れて行う手術です。大腸がんに対する腹腔鏡下手術は、本邦では30年の歴史があります。傷が小さく痛みが少ない・術後回復が早い・癒着が少ない、など体への負担が少ない事(低侵襲)に加え、手術機器の進歩により「狭い空間の深部を拡大視して詳細な観察のもとに精緻な手術を行える」ようになりました【図1】

数多くの臨床試験により腹腔鏡手術の安全性と根治性は証明されてきましたが、「大腸癌治療ガイドライン」では、横行結腸がんや直腸がん・進行がん・肥満の方、などに対する腹腔鏡下手術は、「手術チームの技量と熟練度に応じて適応を考慮するべき」とされています。当科下部消化管外科は、日本内視鏡外科学会技術認定医4名、ロボット支援下直腸切除術指導者(プロクター)2名、日本ロボット外科学会専門医1名体制で診療しており、質の高い手術を提供できるものと確信しております。

ウ.直腸がんに対する治療方法および機能温存根治手術

結腸がんと比較して直腸がんは再発リスクが高く、直腸がんに対する手術は技量を要するとされています。それは、狭い骨盤の深部に「切除するべき直腸がん・リンパ節」と「温存すべき神経・筋肉・肛門など」が密集・密接しているためで、密接する肛門括約筋(肛門を締めて便が漏れないようにする筋肉)や自律神経(排尿・排便・性機能を調節する神経)に傷がつくと、便が漏れたり、尿を自力で出せなくなったり、性機能が喪失したり、人工肛門を余儀なくされることもあります。そのため、直腸がん治療にもとめられる機能温存・根治手術(排尿機能・性機能・排便機能を温存した根治手術)にこそ腹腔鏡下手術の利点が最大現に発揮できると考えています。

直腸がんの部位・進行度・肛門括約筋機能などに問題がなければ、究極の肛門括約筋機能温存術式である直腸超低位前方切除術(肛門管内DST)括約筋間直腸切除術(ISR)を腹腔鏡下・ロボット支援下・経肛門内視鏡手術下に行っています【図2】。また一般的に、直腸がん手術で肛門を温存しても縫合不全(腸管の縫い目から便が漏れる)を予防するため一時的人工肛門が造設されることが多いですが、当科では縫合不全をゼロに近づけるノウハウを有しており、一時的人工肛門を極力回避する努力をしております。他院で「肛門を温存できない・永久人工肛門になる・一時的人工肛門を作らないといけない」と言われた場合は、セカンドオピニオンも提供可能です。

エ.直腸がんに対する最先端の外科治療

狭い空間の深部を直視かつ拡大視できる腹腔鏡手術の登場により、微細解剖を認識しながら精緻な手術を行うことが可能となりましたが、骨盤が狭い、腫瘍が巨大、腫瘍が肛門に近い、直腸周囲の内臓脂肪が厚い(肥満)場合には、腹腔鏡手術で使う直線的な機器では骨盤深部に機器が届かず、角度が合わず、手ブレが大きくなり愛護的で精緻な操作が困難となり、腹腔鏡下手術の恩恵を享受できないこともありました。

しかし、ロボット支援下手術経肛門内視鏡手術は、これらの欠点を解決できる可能性があります。手術支援ロボット(daVinci Surgical System®)は、3次元視野、可動域が270度の7つの関節機能、手振れ除去機能などにより、従来の腹腔鏡下手術ではなし得ない“より安定した術野・視野、繊細な操作”が可能となります。また、経肛門内視鏡手術【図3】、肛門側から内視鏡手術を行うため、骨盤が狭く、腫瘍が巨大で、直腸周囲内臓脂肪が厚くても、腫瘍肛門側からの操作で良好な術野を維持できます。これらの手術は腹腔鏡下手術の弱点を克服しうるアプローチ方法です。当科では直腸がんに対し積極的にロボット支援下に手術を行なっておりますので、外来でお尋ねいただければ専門医が個別に対応いたします。

 


図1


図2


図3

〜参考資料〜

市民公開講座 ちゃやまちキャンサーフォーラム2018(毎日放送・キャンサーネットジャパン)

「ここまで広がった!!大腸(直腸)がんのダヴィンチ手術~可能性と展望~」

http://www.cancerchannel.jp/post35711

大阪赤十字病院市民公開講座テキスト

「ロボット手術 ~未来に向けた最先端医療~」詳細PDF(13MB)

肝胆膵外科について

ア,肝切除術

肝臓は、栄養の貯蔵や分解、胆汁という消化液の産生、解毒作用など生命を支える多くの働きをしています。正常な肝臓であれば、肝臓の70%を切除することが可能ですが、すでに慢性肝炎や肝硬変に陥っていると小範囲を切除しただけでも肝機能がさらに低下し、肝再生も乏しく術後肝不全に陥る危険性があります。そのため、術前に3D画像解析ソフトを用いて、肝切除範囲のシミュレーションを行い、肝機能に応じた肝切除範囲を設定し、がんの根治性と手術の安全性を両立させています(図1)。また、術中に特殊なカメラを使用し、ICGという試薬が光って見える性質を利用することで、がん病巣および血流領域を正確・確実に切除するナビゲーション手術を行っています(図2)。

肝臓は、生命に関わる臓器であり、手術の適応、術式、術後管理を適切に行う必要があります。当院では、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医のもと、多数の高難度手術を安全に行い、極めて低い合併症率を実現しています。

当院ホームページ「がん診療情報」の「肝細胞がん」もご参照ください。

https://www.osaka-med.jrc.or.jp/cancer2/each/cancer4.html

図1:術前シミュレーション
3次元画像解析により、がんと血管との位置関係や切除部分の体積を正確に把握し、肝切除範囲を綿密に計画することができます。

図2:ICG蛍光法を用いたナビゲーション肝切除術
特殊なカメラを用いるとICGという試薬が光って見える性質を利用し、術中にがん病巣を同定したり、血流領域を確認し、肝切除を正確に行います。

イ,腹腔鏡下肝切除術

肝切除術は、従来、腹部に大きな切開を加える開腹術が行われてきました。最近、手術器具の進歩により、腹腔鏡を用いて、小さい切開創で肝切除術が行われるようになってきました。腹腔鏡下肝切除術の方が、開腹肝切除術より手術の所要時間が長くなることがありますが、術後の痛みは少なく、回復が早く、社会復帰も早く、腹腔内の癒着が起こりにくい利点があります。当院では腹腔鏡下肝切除術をいち早く取り入れ、3D腹腔鏡カメラによる立体視野やICG蛍光用カメラによるナビゲーションを駆使し、精密で確実な手術が可能となりました。高難度の肝切除術にも適応を広げ、肝切除術のうち約7割の症例に対して腹腔鏡手術を行い、全国的にも屈指の症例数となっています。肝切除部位によっては、単孔式(へそに数cmの1カ所のみ)の腹腔鏡手術を行っています。当院では、日本内視鏡外科学会技術認定医が丁寧に腹腔鏡下肝切除術を行っています。

ウ,膵切除術

a)膵頭十二指腸切除術(図3)

膵頭部にできたがんに対しては、標準的に膵頭十二指腸切除術を施行します。膵頭部では、肝臓で作られた胆汁という消化液が十二指腸に流れ出るための胆管という管と、膵臓で作られた膵液という消化液が十二指腸に流れ出るための膵管という管の二本のルートが、膵頭部の中を通って一つになって十二指腸に開口しています。このため、膵頭部の腫瘍を切除するためには、膵頭部と十二指腸さらに肝臓から出てすぐの胆管・胆嚢をまとめて切除する必要があります。このように、食べ物の通り道(胃から十二指腸)と消化液の通り道(胆管・膵管)を途中で断ち切るので、切除した後にこれらの通り道を作り直す必要があります(再建といいます)。手術後は、合併症の予防目的にお腹に2-3本の管が入ります。

広範囲の切除と3箇所の再建があり、非常に複雑な手術であり、手術時間は約6-8時間、出血は約500mlとなります。手術後は集中治療室に入室し、翌日以降に一般病棟に戻ります。手術後、順調に回復すれば、2-3週間でお腹の管がすべて抜けて、退院となります。

b)膵体尾部切除術(図3)

膵体尾部にできた腫瘍に対しては標準的に膵体尾部切除術を施行します。

膵臓の左側には脾臓という免疫能の維持や古くなった血小板の処理を行う臓器があります。脾臓につながる血管は膵臓に張り付いているため、この手術では脾臓も一緒に摘出します。

膵体尾部切除術では、膵臓で作られた膵液という消化液が十二指腸へ流れる出口を切除しないので、通り道を作り直す再建は必要ありません。手術後は合併症の予防目的にお腹に1本管が入ることが多いです。

従来開腹手術が一般的でしたが、最近がんの広がりが軽い場合には、術後の回復が早い腹腔鏡手術も行っています。ロボット支援下膵体尾部切除術を2020年12月より開始し、一層綿密な手術を行っています。手術時間は約4時間です。手術後は一般病棟に戻ります。通常、手術後1-2週間で退院となります。

当院ホームページ「がん診療情報」の「膵がん」もご参照ください。

https://www.osaka-med.jrc.or.jp/cancer2/each/cancer18.html

図3:膵臓がんに対する手術
膵頭部のがんには、膵頭十二指腸切除術(膵頭部、十二指腸、胃の一部、胆管、胆のうを切除し、膵空腸吻合、胆管空腸吻合、胃空腸吻合を行い再建する手術)を行います。膵体尾部のがんには、膵体尾部切除術(膵体尾部と脾臓を切除する手術)を行います。

癌治療長期成績(2013-2017)