消化器外科

当科について

科の特色・紹介

当院は、日本外科学会、日本消化器外科学会、日本食道学会食道外科、日本肝胆膵外科学会高度技能(A)認定施設です。

地域がん診療連携拠点病院の役割を担うべく、消化器 ( 食道、胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓、胆道 )のがんの手術を中心に行っています。

大阪赤十字病院 消化器外科では、「手術支援ロボット da Vinci(ダヴィンチ)の最新鋭機Xiを用いた手術(食道がん・胃がん・直腸がん)」を保険診療で受けられます!

内視鏡手術支援ロボット(手術支援ロボットともいいます)とは、従来人間の手で直線的な機器を操って施行していた内視鏡手術(胸腔鏡手術・腹腔鏡手術)をコンピューター制御下により精密・精細に行なえるようにするために開発された医療機器です。従来の開胸・開腹手術や内視鏡手術とくらべて、より繊細で精密な手術操作が可能になるため、根治性(がんの治せ具合)と機能温存(生活の質の担保)というトレードオフの関係にある命題を両立できる、手術中の出血量が少ない、手術後の回復が早い、などの利点が考えられます。

大阪赤十字病院消化器外科では、平成29年よりロボット支援下手術の経験が豊富な指導者である金谷誠一郎部長(食道・胃)と野村明成副部長(直腸)の指導下に食道がん・胃がん・直腸がんに対するロボット支援下手術を保険外自由診療として行なってきました

平成30年度の診療報酬改定により、手術支援ロボットを使用する12術式について新たに保険適用が決定し、これらを施行するための施設基準が定められました。大阪赤十字病院消化器外科では、食道・胃・直腸の3領域ともにロボット支援下手術を保険診療で施行する施設基準を満たしました。食道・胃・直腸の3領域すべてにおいてロボット支援下手術の保険診療施設基準を満たし、かつ指導者が居るのは、関西以西では京都大学消化管外科、大阪赤十字病院消化器外科、佐賀大学一般・消化器外科の3施設だけです(平成30年4月現在、当科調べ)。

食道がん・胃がん・直腸がんに対するロボット支援下手術:これらのがんの手術では、食道や胃や直腸だけでなく、周囲に存在するリンパ節も含めて確実に切除する必要があります。切除するべきリンパ節は、食道がんの手術では反回神経(声を出す声帯の動きを調節する神経)、胃がんの手術では膵臓(膵液という消化液やホルモンなどを産生する臓器)、直腸がんの手術では肛門括約筋(肛門を締めて大便が漏れないようにする筋肉)や自律神経(排尿・排便・性機能を調節する神経)に密接して存在します。反回神経の麻痺が起こると、声がかすれたり、むせや誤嚥の原因となったり、重篤な場合には呼吸の通り道が塞がってしまい呼吸困難となることがあります。膵臓に傷がついて膵液が漏れると、内臓の自己消化がおきて炎症を起こしたり膿がたまる原因となり、また稀ですが血管を溶かして大出血を起こすことがあります。肛門括約筋や自律神経に傷がつくと、大便が漏れたり、尿を自力で出せなくなったり、性機能が喪失したり、さらには人工肛門を余儀なくされることもあります。

より精密な手術操作を行なえる手術支援ロボットを用いることによって、これらの重要な組織を傷つけることなく確実にがん・リンパ節を切除することが可能になると考えられます。

当院で使用している最新鋭の内視鏡手術支援ロボット(da Vinci Xi)については、当院ホームページも御参照ください。

手術支援ロボット da Vinci(ダヴィンチ)ホームページ

対象疾患・診療実績

対象疾患
(ア)上部消化管外科

主に、胃がん・食道がんに対する治療を行っています。当科の特徴として、 進行がんも含めたほぼすべての胃がん・食道がん症例に対して、患者さんにやさしい低侵襲手術(腹腔鏡・胸腔鏡下手術あるいはロボット支援下手術)を第一選択としていることが挙げられます。

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(イ)下部消化管外科

主に、大腸がん(結腸がんと直腸がん)に対する外科治療を行っています。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎とクローン病)、家族性大腸腺腫症、小腸腫瘍に対する外科治療も行っています。開腹手術の既往や腫瘍の進行度を問わずほぼすべての下部消化管疾患に対して腹腔鏡下手術を第一選択としていることが大きな特徴の一つです。また、直腸癌に対する機能温存根治手術(排尿機能・性機能・排便機能を温存した根治手術、人工肛門の回避)に積極的に取り組んでおり、ロボット支援下手術や経肛門内視鏡下手術などの最先端の外科治療まで行えるようになったことも大きな特徴です。

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(ウ)肝胆膵外科

悪性疾患:原発性肝がん(肝細胞がん、肝内胆管がん)、膵臓がん(膵がん)、胆道がん(胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がん)、転移性肝がん(肝転移)、膵神経内分泌腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍など

良性疾患:胆石症、胆のう炎、胆のうポリープ、胆のう腺筋腫症、膵胆管合流異常症、総胆管結石症、肝内結石症、肝のう胞、慢性膵炎など

日本肝胆膵外科学会認定高度技能指導医のもと、難易度の高い手術を数多く行っています。近年、この分野でも腹腔鏡手術の進歩は目覚ましく、徐々に適応を拡げながら、より安全で低侵襲な手術を目指しています。胆のう摘出術ではほぼ全例に、肝切除術では大きな切除も含めて約半数に、膵体尾部切除では疾患により腹腔鏡手術を行っています。

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診療実績

平成29年の手術件数

  食道がん 胃がん 大腸、直腸がん 肝がん 膵がん
全症例数 29 108 215 77 44
うち腹腔鏡下手術 29 96 200 30

消化器がんでは、消化器内科・放射線科と合同でカンファレンスを行い、早期がんに対しては、消化器内科で内視鏡的治療(内視鏡下粘膜切除術・内視鏡下粘膜下層剥離術)やラジオ波治療を積極的に行っていますが、より進行したがんに対しては、消化器外科で手術・放射線治療・化学療法を含めた集学的治療を行っています。診療は、基本的に各疾患の治療ガイドラインに準じて行っています。

お知らせ・その他

専門外来について

ストマ外来(月曜日~金曜日の午後)

上部消化管外科について

ア.腹腔鏡下手術について

直径1cm程度の皮膚切開創から挿入したビデオスコープ(腹腔鏡)で患部を観察しながら、直径5mm~1cmの切開創から挿入した特殊な器具(鉗子や電気メスなど)を用いて行う手術です。日本では、約20年前に胆嚢摘出術(胆石の手術)に導入され、その後、婦人科疾患や大腸疾患へと広まりました。胃がんや食道がん手術への応用はやや遅く、本格的になってきたのはこの10年ほどです。

美容面はもちろんのこと、創が小さいので術後の創痛が少なく、離床が早くなる(術後の肥立ちが良い)のがメリットとされています。特に高齢者では、早期の離床が術後せん妄(いわゆる痴呆)の予防に有効です。

一方、手術をする側の外科医が考える利点は、これだけではありません。腹腔鏡による拡大視とそれによってもたらされる精緻な手術こそが、最大のメリットと我々は考えています。止血の必要な細い血管や、傷つけてはいけない細い神経等が、高精細スコープによって容易に確認でき、正確で出血の少ない手術が可能になりました。術後の合併症減少への貢献以外に、最終的にはがんの根治性向上に結びつくものと考えています。

イ.胃がんに対する腹腔鏡下胃切除について

腹腔鏡下胃切除は、日本胃がん学会による「胃がん治療ガイドライン」では、長らく非定型的なオプションと位置づけられ、現在も早期胃癌に担当するcStageⅠ症例でのみ日常診療の選択肢になりうるとされています。そういった事情もあり、腹腔鏡下胃切除の対象を早期胃がんに限定している施設が多いのが現状ですが、一方で早期に腹腔鏡下胃切除を導入した施設では、手術手技も安定し、適応は拡大傾向にあります。

当科では前述のとおり、原則として進行がんも含めたすべての胃がん症例に対して腹腔鏡下胃切除を第一選択としています。また、通常4~5cm長の小切開を加える腹腔鏡補助下手術を採用する施設が多い中、当科では計5カ所の1~2cm長の切開だけで胃がんの手術のすべて(胃切除、リンパ節郭清、再建)を行っています(図1)。すでに10年以上の実績があり、日本内視鏡外科学会の技術認定医も複数名在籍し、進行がんや食道浸潤症例にも万全の体制で臨んでいます。

以上の低侵襲手術に加え、ステージⅡ以上の進行胃がんに対しては、化学療法を併用した集学的治療を積極的に進めています。

ウ.食道がんについて

食道がんに対しても、胸腔鏡・腹腔鏡下での食道切除術を原則としています(図2)。頚部・胸部・腹部の 3 領域リンパ節郭清を行いながらも、1~2cm長の創数カ所だけで手術を行うため、術後の回復も早く、通常、術後2週間程度で退院/社会復帰が可能です。また、ビデオスコープを用いた精細な操作のおかげで、合併症の発生も少なくなっています。

なお、ステージⅡ、Ⅲの症例に対しては、術前化学療法を行った上での手術を行い、ステージⅣに対しては化学放射線療法を行うなど、化学療法や放射線療法を併用した集学的治療も積極的に行っています。

エ.ロボット支援下手術について

当科では、2017年から上記の胃がん食道がんに対するロボット(米国intuitive社製davinci Surgical System)を用いた内視鏡施術を開始しました(図3)。手振れ防止機能の搭載によってより精細なリンパ節郭清が可能です。また、2018年4月からは新たに12の術式が保険収載され(施設基準あり)、当科では「食道がん・胃がんに対するロボット支援下手術」も保険診療で行えるようになりました。詳しくはそれぞれの担当医にお尋ねください。

参照ページ(ダヴィンチページ)

下部消化管外科について

ア.大腸がんに対する治療方法

一部の早期大腸がんに対しては、消化器内科による内視鏡治療(内視鏡下粘膜切除術・内視鏡下粘膜下層剥離術)が考慮されます。しかしほとんどの大腸がんに対する根治的な治療は「外科治療が第一選択」になります。大腸がんの進行度に応じて、手術前や手術後に抗がん剤治療や放射線治療が推奨される場合もあります。消化器内科・腫瘍内科・放射線科・病理診断科と話し合い綿密な計画を立てた上で最善と考えられる治療を御提供いたします。

また、大腸がんにより大腸が完全に閉塞した状態(詰まった状態)で発見され た場合には、従来は緊急開腹手術で人工肛門を造設したり複数回の手術を必要 とすることが多かったですが、大腸内に貯留した大便を排出させる処置(大腸 ステントや経肛門イレウス管の留置)を行うことにより、人工肛門を回避でき るばかりでなく手術が1回で済ませられるようになってきました(全身状態など によっては困難なこともあります)。

イ.大腸がんに対する腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術とは、腹部に5mm~1cmの穴を開けて炭酸ガスで腹部を膨らませた状態とし(気腹といいます)、内視鏡(腹腔鏡)と先端の細かい手術機器(電気メス・鉗子・縫合器など)をお腹の中に入れて詳細な観察のもとに精細な手術を行う手術方法です。

大腸がんに対する腹腔鏡下手術は1991年にアメリカで、本邦では1992年に初めて行われ、すでに4半世紀が経ちました。傷が小さい(整容的)・痛みが少ない・術後の肥立ちが早い・早く社会復帰できる・癒着が少なく腸閉塞(お腹の傷の裏と小腸などとがくっつき腸が詰まること)になりにくい、すなわち低侵襲である(体に対する負担が少ない)ということが導入当初に考えられた主な利点でした。

光学系機器(フルハイビジョン内視鏡や3次元内視鏡)、さらには腹腔鏡専用手術機器の開発・進歩により「狭い空間の深部を直視・拡大視して詳細な観察のもとに精緻な手術を行える」ようになったことが腹腔鏡下手術の最大の利点であると考えているため、開腹手術の既往や大腸がんの進行度を問わず原則として腹腔鏡下手術を第一選択としています。

この4半世紀の間に、大腸がんに対する開腹手術と腹腔鏡下手術の安全性(合併症のなさ)と根治性(治せ具合)を比較検討する臨床試験が多く行われ、腹腔鏡下手術が明らかに劣るという結果は出ておりませんが、横行結腸がんや直腸がん・進行がん・肥満の方、などに対する腹腔鏡下手術は、「手術チームの技量と熟練度に応じて適応を考慮するべき」とされています。当科下部消化管外科には、日本内視鏡外科学会の技術認定医が2名、日本ロボット外科学会の専門医が1名在籍し、質の高い手術を御提供できるものと確信しております。ただし心臓や肺の働きが高度に低下して全身麻酔下の腹腔鏡下手術が危険であると判断された方には、安全性を確保するために開腹手術を提示させていただく場合があります。

ウ.直腸がんに対する治療方法および機能温存根治手術【図1~3】

結腸がんと比較して直腸がんは悪性度が高い(再発転移をきたす頻度が高い)ことが知られています。そのため、根治性の向上と機能の温存を目指して手術前に抗がん剤治療や放射線治療を提案させて頂く場合があります(進行度と全身状態によります)。

直腸がんに対する手術は技量を要するとされています。狭い骨盤の深部に「切除するべき直腸がん・リンパ節」と「温存を考慮するべき神経・筋肉・肛門など」が密集・密接していることがその由縁です。

従って、直腸がんに対する機能温存根治手術(排尿機能・性機能・排便機能を温存した根治手術)にこそ、腹腔鏡下手術の利点を最大現に発揮できると考えています。また、ある程度進行した直腸がんでは、排尿機能・性機能を司る自律神経群の外側に存在する側方リンパ節も切除することが推奨されており、これらの自律神経を温存した側方リンパ節郭清術(自律神経の内側だけでなく外側のリンパ節をも切除すること)も腹腔鏡下に、さらには後述するロボット支援下に行っております。

直腸がんの部位・進行度・肛門括約筋機能などに問題がなければ、究極の肛門温存術式である括約筋間直腸切除術(ISRといいます)を腹腔鏡下・ロボット支援下・経肛門内視鏡手術下(後述)に行っておりますので、「肛門を温存できない・永久人工肛門になる」と言われた場合のセカンドオピニオンも御提供可能です。また一般的には、肛門を温存できた場合には、縫合不全(大腸と肛門の縫い目が破綻すること)を予防するために一時的な人工肛門が造設されることが多いですが、当科では縫合不全をゼロに近づけるノウハウを有しており、一時的人工肛門を極力回避する努力をしております。


図1


図2


図3

エ.直腸がんに対する最先端の外科治療【図4~7】

狭い空間の深部を直視かつ拡大視できる腹腔鏡手術の登場により、微細解剖を明瞭に認識しながら精緻な手術を行うことが可能となり、出血量の減少、根治性の向上と生活の質の向上の両立が可能になったと考えられます。

しかし、骨盤が狭い、腫瘍が巨大、腫瘍が肛門に近い、直腸周囲の内臓脂肪が厚い(肥満)場合には、骨盤の深部での操作が困難となり腹腔鏡下手術の恩恵を享受できないこともありました。また、腹腔鏡手術では直線的な機器(鉗子といいます)を用いて手術を行うこと、触覚が欠如していることから、愛護的な操作が困難となる場面もありました。骨盤の深部の操作では、テコの原理により手術機器先端のブレが大きくなるため、繊細な操作が困難になると考えられます。

ロボット支援下手術や経肛門内視鏡手術の登場そして導入により、これらの欠点が解決する可能性があります。

米国Intuitive Surgical 社(Intuitive とは直感的という意味です)から発売され ている手術支援ロボットであるdaVinci Surgical System は、①3 次元視野、②7 つの関節により270°の可動域を有する自由度の高い手術機器(鉗子、鋏など)、③motion scaling 機能による縮尺した動き、④手振れ除去機能により、従来の腹腔鏡下手術ではなし得ないような“より安定した術野・視野”、“より繊細な操作”が可能となります。

経肛門内視鏡手術では、肛門側からの炭酸ガス送気下に内視鏡手術を行うため、たとえ骨盤が狭く、腫瘍が巨大で、直腸周囲内臓脂肪が厚い場合であっても、腫瘍の肛門側から観察するため、良好な術野を維持できます。また、腹腔鏡手術では手術機器が骨盤深部に届かず、角度が合わず、ブレが大きくなるのに対し、経肛門内視鏡手術では直近の操作を行うため手術機器が届かないこともなく、motion scaling による繊細な動き(縮尺した動き)が可能となるため、腹腔鏡下手術の弱点を克服しうるアプローチ方法であるといえます。

当科では、平成29年度(2017年度)より、直腸がんに対する機能温存根治手術をロボット支援下や経肛門内視鏡下に開始しましたので、外来担当医にお尋ねいただければ専門医(野村明成副部長)が個別に対応いたします。


図4


図5


図6


図7

ちゃやまちキャンサーフォーラム2018
「ここまで広がった!!大腸(直腸)がんのダヴィンチ手術~可能性と展望~」
講  師 野村 明成(消化器外科部副部長)
共  催 株式会社 毎日放送・NPO法人 キャンサーネットジャパン
動画配信 http://www.cancerchannel.jp/post35711
https://m.youtube.com/watch?v=Sv7HpbjMjS0
肝胆膵外科について

I. がんに対する治療について

ア,原発性肝がん(肝細胞がん、肝内胆管がん)

肝細胞がん(肝がん)に対する治療法は、主に、1.肝切除術、2.ラジオ波焼灼療法(RFA)、3.肝動脈化学塞栓療法(TACE)、4.肝動注療法、5.全身化学療法、6.放射線療法、7.肝移植術があります。消化器内科、放射線科との合同症例検討会に諮り、肝がん診療ガイドラインに則り、患者さん各々に最も適した治療法の組み合わせを提示します。当科では、肝切除術を担当します。肝硬変を伴った肝細胞がんに対する肝移植術を当院では行っていませんが、経験豊富な日本移植学会認定医が患者さんやご家族にその詳細を説明します。当院ホームページ「がん診療情報」の「肝細胞がん」もご参照ください。

https://www.osaka-med.jrc.or.jp/cancer2/each/cancer4.html

肝内胆管がん(胆管細胞がん)に対する治療は、肝切除術とともに転移が起こりやすい周辺のリンパ節を掃除(リンパ節郭清)し、必要に応じて肝外胆管の切除と小腸による再建(胆道再建)を行います。

イ,転移性肝がん(肝転移)

転移性肝がんで最も多いものが、大腸がんの肝転移です。大腸がんに対する化学療法(抗がん剤治療)は急速に進歩しています。肝臓に転移しても化学療法により長期に生存できるようになってきました。しかし、化学療法だけで完全にがんが消えてしまうことは稀です。肝転移を手術で切除することにより、完治を期待できるようになります。化学療法と肝切除術をいつどのように組み合わせるかは患者さんごとに検討する必要があります。よりよい治療効果や副作用を科学的に証明するために、京都大学を中心とした多施設共同臨床試験に参加予定です。
「大腸癌肝転移治癒切除後の患者に対する術後補助化学療法としてL-OHPベース化学療法にUFT/LV療法の逐次療法を行うことの安全性と有用性の検討」
「同時性切除不能大腸癌肝転移に対する肝先行切除または原発先行切除の有用性および安全性の検討」

ウ,膵臓がん(膵がん)

放射線科による画像診断や消化器内科による内視鏡診断を行い、膵臓がんの局所進展範囲、リンパ節転移や遠隔転移の有無を判定し、最善の治療法を提供します。手術は、膵臓がんの位置により、主に膵頭十二指腸切除術(PD)か膵体尾部脾臓切除術(DP)を行います。膵臓がんは、難治性がんの代表ですが、早期発見と切除が最も大切です。しかし、ステージII以上の膵臓がんは、術後の再発率が高く、それを予防するため、体力に合わせて術後補助化学療法(抗がん剤治療)を行います。また、最近、膵臓がんを取り残しなく切除できるかどうかの境界病変の場合、最初に手術を行うのではなく、まず、術前に化学療法や放射線療法を行って、がん病巣を小さくしてから切除術を行う方が再発率を低くできるのではないかといわれています。これを科学的に証明するために、京都大学を中心とした多施設共同臨床試験「切除可能境界膵癌に対するゲムシタビン・IMRT併用による術前化学放射線療法の第II相臨床試験」に参加しています。当院ホームページ「がん診療情報」の「膵がん」もご参照ください。

https://www.osaka-med.jrc.or.jp/cancer2/each/cancer18.html

エ,胆道がん

胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんに対して、消化器内科や放射線科と協力し、各種検査でその進展範囲を診断し、黄疸や胆管炎の治療を行い、手術適応や術式を検討します。早期の胆のうがんであれば、胆のう摘出術だけで根治が得られることもありますが、胆道がんの進展範囲によっては、根治をめざすために、肝切除と膵頭十二指腸切除を同時に行う場合(HPD)もあり、門脈や肝動脈を合併切除し再建することもあります。

II. 手術

ア,肝切除術

肝臓は、栄養の貯蔵や分解、胆汁という消化液の産生、解毒作用など生命を支える多くの働きをしています。正常な肝臓であれば、肝臓の70%を切除することが可能です。それは、正常な肝臓は肝切除後の再生能力が旺盛で、小さくなった肝臓が3ヶ月もすれば元の80%程度まで大きくなり、肝臓の働きつまり肝機能も回復するからです。がんの根治性を高めるためには、肝臓を大きく切除し、さらに門脈、肝動脈、下大静脈といった大血管合併切除、再建術を行う場合があります(図1)。しかし、土台の肝臓がすでに慢性肝炎や肝硬変に陥っていると肝機能が低下しています。小範囲を切除しただけでも肝機能がさらに低下し、肝再生も乏しく術後肝不全に陥る危険性があります(図2)。術前に3D画像解析ソフトを用いて、肝切除範囲のシミュレーションを行い、肝機能に応じた肝切除範囲を設定し、がんの根治性と手術の安全性を両立させています(図3)。また、術中に特殊なカメラを用いると、ICGという試薬が光って見える性質を利用し、がん病巣を確実に切除したり、血流領域を確認して切除を行うナビゲーション手術も行っています(図4)。

肝切除術を計画するにあたり、残すことができる肝臓の体積が小さく、術後肝不全に陥る危険性があると予測される場合、予め経皮経肝門脈枝塞栓術(PTPE)という処置を行う場合があります。これは、腸管から肝臓に流れる門脈という血管のうち、切除を予定している肝臓部分の門脈枝をカテーテル操作で詰めてしまい、残る予定の肝臓部分の肥大を図る処置です。PTPE処置から約1ヶ月後に肝切除術を行うことで、術後の肝不全を回避します(図5)。

最近は、約10日の間隔で2回に分けて肝切除術を行う方法(ALPPS)も考案されています。これは、1回目の手術後、残すべき肝臓が急速に肥大するという特徴がありますが、患者さんの負担も大きく適応を慎重に考えます。

図1:体外循環回路(人工心肺装置)を用いた肝切除術
がんの根治性を得るために、下大静脈合併切除を必要とする肝切除では、術中に人工心肺装置を用いる場合もあります。心臓血管外科や形成外科の協力のもとに血管再建を行うこともあります。

図2:肝切除術における根治性と安全性のバランス
正常肝では、がんの根治性と手術の安全性を両立させることが容易ですが、障害肝ではそのバランスをとることが難しくなります。

図3:術前シミュレーション
3次元画像解析により、がんと血管との位置関係や切除部分の体積を正確に把握し、肝切除範囲を綿密に計画することができます。

図4:ICG蛍光法を用いたナビゲーション肝切除術
特殊なカメラを用いるとICGという試薬が光って見える性質を利用し、術中にがん病巣を同定したり、血流領域を確認し、肝切除を正確に行います。

図5:経皮経肝門脈枝塞栓術(PTPE)
がんが存在する側の門脈に塞栓物質を注入すると、約1ヶ月で反対側の肝臓が肥大します。残す肝臓の体積が大きくなり、安全に肝切除を行うことができます。

イ,腹腔鏡下肝切除術

肝切除術は、従来、腹部に大きな切開を加える開腹術が行われてきました。最近、手術器具の発達により、腹腔鏡を用いて、小さい切開創で肝切除術が行われるようになってきました(図6)。腹腔鏡下肝切除術の方が、開腹肝切除術より手術の所要時間が長くなることがありますが、術後の痛みは少なく、回復が早く、社会復帰も早く、腹腔内の癒着が起こりにくい利点があります。しかし、がんの位置や過去の手術歴などにより腹腔鏡手術が難しい場合もあります。当院では腹腔鏡下肝切除術をいち早く取り入れ、2013年から3D腹腔鏡カメラを導入し、立体視野で正確な操作が可能となりました。高難度の肝切除術にも徐々に適応を広げ、年間約100例の肝切除術のうち約半数に対して腹腔鏡手術を行い、すでに合計約380例(2017年10月現在)と、全国的にも屈指の症例数となっています(図7)。肝切除部位によっては、単孔式(臍部の小孔1カ所のみ)の腹腔鏡手術を行い、より低侵襲な手術を追求しています。

図6:開腹肝切除術と腹腔鏡肝切除術の違い

図7:当院の肝切除症例数
高難度肝切除術にも腹腔鏡手術の適応を広げ、全体の約半数となっています。

ウ,膵切除術

膵頭部のがんに対して、膵頭十二指腸切除術(PD:膵頭部、十二指腸、胃の一部、胆管、胆のうを切除し、膵と空腸、胆管と空腸、胃と空腸を繋ぎ再建する手術)を行います。膵体尾部のがんに対して、膵体尾部切除術(DP:膵体尾部と脾臓を切除する手術)を行います(図8)。がんの位置や広がりによっては、膵全摘術(TP)を行う場合もあります。がんの根治性を高めるために、しばしば門脈合併切除、再建術も併せて行います。保険適応疾患に対して、腹腔鏡下膵体尾部切除術を行っています。膵切除術では、膵臓が産生する消化液である膵液の漏出が起こらないよう術式を工夫しています。また、膵臓が産生するホルモンであるインスリンが減少し術後高血糖を来せば、糖尿病内科と連携して治療を行います。

図8:膵臓がんに対する手術
膵頭部のがんには、膵頭十二指腸切除術(膵頭部、十二指腸、胃の一部、胆管、胆のうを切除し、膵空腸吻合、胆管空腸吻合、胃空腸吻合を行い再建する手術)を行います。膵体尾部のがんには、膵体尾部切除術(膵体尾部と脾臓を切除する手術)を行います。

リンク

参考資料

日本内視鏡外科学会「技術認定取得者のための内視鏡外科診療ガイドライン 2014年版」

大腸癌研究会「大腸癌治療ガイドライン 2016年版」