小児外科

当科について

科の特色・紹介


1.小児外科とは

小児外科では、新生児から15歳(中学生)までの外科疾患の治療を行います。最近では胎児の超音波検査が発達し、生まれる前に外科疾患が診断される場合もあります。一方、こどもの頃から重篤な病気を持つ患者さんは、成人になっても治療を続けることもあり、赤ちゃんから大人まで治療の対象となります。

小児外科で治療する病気や臓器は、多岐にわたります。頚部、口腔、肺、気管、腹壁、消化管(食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門)、肝臓、胆道、膵臓、腎臓、泌尿器(精巣、卵巣、尿管、膀胱、尿道、膣)などあらゆる病気の外科治療を行います。また外傷(交通事故、転落など)、悪性の病気(神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫、横紋筋肉腫など)も治療の対象です。

このように幅広い年齢、臓器、病気の治療を行い、かつ緊急手術にも的確に対応する必要があるため、一人前の小児外科医になるためには、長い修練が必要であり、豊富な経験も要求されます。現在、全国の小児外科専門医は338人、指導医は253人、小児泌尿器科認定医は165人、小児がん認定外科医は98人、周産期・新生児認定外科医にいたっては59人しかいません。また、「小児外科」を標榜して夜間や休日の緊急手術にも対応できる病院は、大阪府内に12施設しかありません。こどもの泌尿器科疾患の検査や治療ができる病院はさらに少なく、非常に限られています。

2.当科の紹介

我々のモットーは、「こどもと家族が笑顔で帰っていただける医療」を提供することです。当科の小児外科医は、外科専門医・指導医、小児外科専門医・指導医、小児がん認定外科医、周産期・新生児認定外科医、小児泌尿器科認定医のすべてを取得しており、日常的な病気から、新生児の病気(食道閉鎖、腸閉鎖症、横隔膜ヘルニア、鎖肛、臍帯ヘルニアなど)、泌尿器科疾患(水腎症、膀胱尿管逆流症、尿道下裂など)、緊急疾患(虫垂炎、消化管穿孔、精巣捻転症、外傷など)、悪性腫瘍まで診断と治療が可能です。

外来では日常よく見る病気である、だっちょう(脱腸:鼠径ヘルニア)、でべそ(臍ヘルニア)をはじめ、便秘、切痔(裂肛)、包茎についてご家族の不安を取り除くよう丁寧に説明しています。鼠径ヘルニア、陰嚢水腫、臍ヘルニア、停留精巣などは1泊2日入院で手術を行っています。また手術だけではなく、臍ヘルニアには圧迫療法、包茎にはストレッチ療法、胸が陥凹している漏斗胸には吸引療法を取り入れ、手術をせずに良くなる方法も提供しています。

近年、こどもにも腹腔鏡や胸腔鏡を使った手術が取り入れられてきました。これら鏡視下手術は傷が小さく、術後の痛みもすくないため「低侵襲手術」と呼ばれています。当科では鼠径ヘルニアや虫垂炎をはじめ、腹腔内停留精巣、腹部腫瘤、漏斗胸手術などひろく鏡視下手術を取り入れています。

【腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(LPEC)】

【腹腔鏡下虫垂切除術】

当院では、心身に障害を持つこどもに専門の医療・療育サービスを提供する、大手前整肢学園を併設しています。脳性麻痺などの重い身体障害を持つ患者さんでは、食事が飲み込めない方や嘔吐が続くため、栄養障害や誤嚥性肺炎、さらには逆流性食道炎による吐血に悩まされている方も多くおられます。このような症状の患者さんに、胃食道造影検査や24時間食道pHモニター検査を行い、胃食道逆流症の有無を診断しています。そして重症度に応じて、胃瘻造設術や噴門形成術(逆流防止手術)、気管切開術、喉頭気管分離術を行います。

また尿路感染を繰り返すこどもでは、超音波検査や膀胱造影検査で膀胱尿管逆流症や水腎症の診断を行い、膀胱尿管新吻合術や、膀胱鏡下デフラックス注入療法、腎盂尿管形成術を行います。

【膀胱尿管逆流症に対する膀胱鏡下注入療法】

尿路感染のたびに発熱を繰り返している5歳のこどもに排尿時膀胱造影検査を行ったところ、膀胱から尿管、腎臓へ造影剤が逆流していました(左図)。シンチグラム検査で腎臓は白黒不均一に写り、すでに腎臓に障害が起こっていることがわかります(下図)。膀胱鏡下注入療法ではお腹を切らないため、傷跡は残らず、短期間で退院できます。

これまでに当科で行った手術の15%は、緊急手術です。重篤な病気や緊急疾患では小児科、新生児・未熟児科と連携し、「病気のこどもの最後の砦」となるよう「断らない小児科・小児外科・小児泌尿器科」を実践しています。小児外科医が超音波検査や造影検査などの画像検査を担当して迅速かつ正確な診断を心掛け、緊急の患者さんを365日、24時間受け入れています

学会施設認定:日本小児外科学会教育関連施設、日本小児血液・がん学会専門医研修施設
施設会員:日本小児外科内視鏡外科・手術手技研究会、日本胆道閉鎖症研究会、日本直腸肛門奇形研究会

対象疾患・診療実績

対象疾患
  • 頭頚部:耳前瘻孔、副耳、舌小帯短縮症、正中頸嚢胞、側頸瘻、梨状窩瘻、リンパ管腫、血管腫
  • 胸部:漏斗胸、嚢胞性肺疾患、肺分画症、気管・気管支軟化症、横隔膜ヘルニア
  • 消化管:異物誤嚥、胃食道逆流症、先天性食道閉鎖症、先天性食道狭窄症、食道アカラシア、食道裂孔ヘルニア、胃潰瘍、肥厚性幽門狭窄症、胃軸捻転、消化管穿孔、腸閉鎖症、腸回転異常症、腸重積症、メッケル憩室、腸管重複症、腸閉塞、ヒルシュスプルング病、急性虫垂炎、壊死性腸炎、胎便性腹膜炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸管ポリープ
  • 肝胆膵:胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症、胆石症、門脈圧亢進症、膵炎、膵嚢胞
  • 直腸・肛門:直腸肛門奇形(鎖肛)、肛門周囲膿瘍・乳児痔瘻、裂肛、便秘、脱肛
  • 泌尿生殖器:停留精巣(停留睾丸)、精巣捻転症、水腎・水尿管症、膀胱尿管逆流症、腎嚢胞、重複腎盂尿管、尿道下裂、包茎、卵巣嚢腫、陰唇癒合、膣閉鎖
  • 腹壁・体表:臍ヘルニア、臍帯ヘルニア、腹壁破裂、臍炎・臍肉芽腫、鼠径ヘルニア、陰嚢水腫・精索水腫・ヌック水腫、白線ヘルニア
  • 腫瘍:神経芽腫、腎芽腫、肝腫瘍、胚細胞腫瘍(奇形腫)、横紋筋肉腫など
  • 各々の病気については、日本小児外科学会のホームページ(http://www.jsps.gr.jp/)、「小児外科で治療する病気」をご覧ください。

    診療実績

    1.手術実績

    (1) 手術総数(2005年-2017年:13年):2,814例
      緊急手術:413例、新生児手術:70例
    (2) 手術件数の年次推移
      手術件数の年次推移
    (3) 腹腔鏡・胸腔鏡手術(2017年):98件(全手術件数の35%)
     
    その他手術:横隔膜ヘルニア修復術、食道閉鎖根治術、食道狭窄症手術、十二指腸閉鎖症手術、新生児消化管穿孔手術、腸回転異常症手術、噴門形成術、胃瘻造設術、幽門筋切開術、メッケル憩室切除術、臍腸管切除術、腸軸捻転症手術、重複腸管切除術、腸管膜リンパ管腫切除術、観血的腸重積整復術、直腸脱手術、痔瘻根治術、高位・中間位・低位鎖肛根治術、ヒルシュスプルング病根治術、副腎・後腹膜神経芽腫摘出術、仙尾部奇形腫摘出術、卵巣奇形腫切除術、胆道拡張症手術(肝管空腸吻合術)、胆道閉鎖症手術(肝門部空腸吻合術:葛西手術)、脾臓摘出術、内視鏡的消化管異物摘出術、内視鏡的大腸ポリープ切除術、胸腔鏡下漏斗胸手術(Nuss法)、副乳切除術、耳前瘻孔切除術、甲状舌管嚢腫摘出術、側頚瘻切除術、舌下腺嚢胞切除術、舌小帯切離術、上唇小帯切離術、水腎症根治術、尿道形成術(尿道下裂手術)、外尿道口嚢腫切除術、尿膜管切除術、膣形成術、尿管ステント留置術、リンパ管腫硬化療法、中心静脈カテーテル挿入術

    2.検査実績(2013年-2017年:5年)

    (1) 腹部・体表超音波検査:1,612例
    (2) レントゲン透視検査(消化管・尿路など):268例

    お知らせ・その他

    1.紹介いただく医療機関の先生方へ

    大阪赤十字病院は創立100年を越え、昔からこどもの外科治療を行ってきましたが、「小児外科」の診療科が標榜されて14年が経ちました。これからも地域の小児医療に根付くように、「断らない小児外科・小児泌尿器科」を目指してまいります。時間内、時間外、夜間、休日を問わず、ご紹介をお待ちしております。日常よくみる疾患から緊急疾患、さらに画像診断に至るまで、皆様の信頼を得られるように努力いたします。鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、停留精巣、便秘から急性腹症、急性陰嚢症、新生児までお気軽にご相談ください。

    ご紹介いただく方法

    (1)初診診察予約:地域医療連携室(TEL: 06-6774-5127、FAX: 06-6774-5126)を通して予約をお願いいたします。
    (2)緊急患者など当日の診察依頼
    ①平日9~17時:代表番号(06-6774-5111)から小児外科医をご指名ください。
    ②時間外(平日17~翌朝9時)および休日の診察依頼:代表番号(06-6774-5111)から、小児科救急担当医をご指名ください。

    2.診察希望のご家族の方へ

    こどもさんが「脱腸(だっちょ)じゃないか」、「睾丸が触れない」、「でべそが気になる」、「おちんちんの皮が剥けない」など小児外科の病気が疑われる場合は、かかりつけの先生を通じて地域医療連携室から診察予約をお取りください。
    激しい腹痛、嘔吐など緊急の外科疾患が疑われる場合は、救命救急センターで緊急対応いたします

    3.小児外科に興味がある医学部生の方へ

    小児外科に興味があり、将来、小児外科医になりたい学生の方は、大野耕一(k-ohno@r2.dion.ne.jp)までご連絡ください。
    (病気に関するお問い合わせにはお応えできません。悪しからずご了承ください)

    4.学術業績

    (1)論文発表

     
    1) 1) 大野耕一 他:重症心身障害者の移行期医療における小児外科医の役割.小児科臨床、71:514-520、2018.
    2) 堀池正樹 他:小児特発性腸重積整復後の予後予測因子の検討 超音波検査による回腸末端の所見.日小外会誌、53:1252-1256、2017.
    3) Ohno K et al: The long term results of implantable central venous access devices in infants. Pediatr Int, 58: 1027-1031, 2016.
    4) 堀池正樹 他:回盲部リンパ濾胞性ポリポーシスによって腸重積症を繰り返した幼児の1例. 日小外会誌, 52: 1208-1213, 2016.
    5) 大野耕一:漏斗胸の術後再発と術式選択・適応【Ravitch法とNuss法の適応を考慮し, 患者に説明した上で術式を決定】. 日本医事新報, 4787: 59-60, 2016.
    6) 大野耕一 他:腸閉塞. こどもケア, 10: 43-47, 2015
    7) 堀池正樹 他:非典型的な臨床経過をたどった急性陰嚢症の1例.日小児泌会誌, 25: 24-27, 2016
    8) Ohno K et al: Congenital urethrovaginal fistula associated with imperforate hymen causing fetal urinary ascites and abdominal cystic lesions: a case report and literature review. J Ped Surg Case Reports, 3: 48-52, 2015.
    9) 松川泰廣 他:Abdominoscrotal hydroceleの臨床像 なぜ診断が困難なのか?.日小泌会誌、23:12-17、2014.
    10) 大野耕一 他:鼠径管アプローチによるヘルニア修復術習得に必要な手術執刀数:腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術導入後の問題点.日小外会誌、50:211-216、2014
    11) 堀池正樹 他:小児盲腸軸捻転症の1例.日小外会誌、50:251-256、2014
    12) 大野耕一 他:超低出生体重児の消化管穿孔の成績と予後因子.pp 114-118、永井書店、大阪、2013
    13) Ohno K et al: Familial Currarino syndrome associated with Hirschsprung disease: Two cases of a mother and daughter. J Surg, 48: 233-238, 2013.
    14) 大野耕一 他:小児がん患児における体外型カフ付き中心静脈カテーテルの合併症と長期成績.日小児血がん会誌、49:495-498、2012.

    (2)学術集会発表

    1) 1) Ohno K et al: The role of pediatric surgeons in transitional care of patients with severe mental and physical disabilities. 51th Annual Meeting of Pacific Association of Pediatric Surgeons, 2018. 5. 15.
    2) 高田斉人 他:癌化を認めた若年性大腸ポリポーシスの1女児例.第48回日本小児消化管機能研究会.2018.2.11.
    3) 大野耕一 他:超低出生体重児の消化管穿孔術後に発症したミルクカード症候群の1例.第53回日本周産期・新生児医学会学術集会、2017.7.16.
    4) 高田斉人 他:急性陰嚢症発症後、遅発性に精巣膿瘍を合併した1例.第26回日本小児泌尿器科学会学術集会、2017.7.6.v
    5) 高田斉人 他:小児領域における単孔式及びRPSによる腹腔鏡下噴門形成術.6th Reduced Port Forum Surgery 2017 in Oita、2017.8.5.
    6) 林 宏昭 他:腹腔鏡補助下に摘出し得た腸間膜原発限局型キャッスルマン病の1学童例.第30回日本内視鏡外科学会、2017.12.8.
    7) 大野耕一 他:精巣類表皮嚢腫の1乳児例.第54回日本小児外科学会学術集会, 2017.5.12.
    8) 高田斉人 他:回腸閉鎖症術後に消化管アレルギーによる腸閉塞を合併した1例.第54回日本小児外科学会学術集会, 2017.5.13.
    9) 林 宏昭 他:直腸脱を主訴に発見された膀胱結石の1例.第54回日本小児外科学会学術集会, 2017.5.12.
    10) 大野耕一 他:臍帯ヘルニアに対するWound Retractorを用いた多期的腹壁修復術. 第29回近畿小児科学会, 2016.3.6.
    11) 大野耕一 他:小児救急医療における小児外科医の役割ー 診察依頼に対する対応 ー. 第53回日本小児外科学会学術集会, 2016.5.26.
    12) 大野耕一 他:総胆管結石を合併した遺伝性球状赤血球症に対する内視鏡的乳頭バルーン拡張術. 第43回日本小児内視鏡研究会, 2016.7.10.
    13) 堀池正樹 他:回腸穿通を起こし腹腔内膿瘍および腸閉塞を合併したHenoch-Schonlein紫斑病の1例. 第53回日本小児外科学会学術集会, 2016.5.26.
    14) 東尾篤史 他:乳児虫垂重積症の1手術例. 第52回日本小児外科学会近畿地方会, 2016.8.27.
    15) 大野 耕一 他:腸骨に達する腹壁挫滅創に対する陰圧創傷治療システム.第26回日本小児外科QOL研究会,2015.10.17.
    16) 大野耕一 他:経腸栄養再開後に死亡した超低出生体重児消化管穿孔例の検討.第51回日本周産期・新生児学会学術集会,2015.7.10.
    17) 大野耕一 他:超低出生体重児消化管穿孔の死亡原因の検討.第52回日本小児外科学会学術集会,2015.5.28.
    18) 大野耕一 他:重症染色体異常の生存退院に関わる因子.第52回日本小児外科学会学術集会,2015.5.28.
    19) 堀池正樹 他:胃食道逆流症を有するCarry-over 重症心身障害児 に発生したBarrett腺癌の1例.第57回日本小児血液・がん学会学術集会.2015.11.28.
    20) 堀池正樹 他:交通外傷により骨盤骨折、直腸離断及び 尿道完全離断を認めた1男児例.第29回日本小児救急医学会学術集会,2015.6.13.
    21) 大野耕一 他:乳幼児に対する中心静脈アクセスポートの有用性.第114回日本外科学会定期学術集会、2014. 4. 5.
    22) Ohno K et al: Usefulness of central venous access ports in babies and infants. 47th Annual Meeting of Pacific Association of Pediatric Surgeons, 2014. 5. 26.
    23) 大野耕一 他:重症染色体異常に対する治療方針の変遷.第30回日本小児外科学会秋季シンポジウム、2014. 11. 1.