血液内科

当科について

診療科の特徴

白血病、悪性リンパ腫等の難病が多いですが、治癒をめざした医療を行なっています。

急性白血病など緊急を要する症例は、随時、受け入れています。

造血器腫瘍に対して分子遺伝学的レベルの解析を行うことにより、抗癌剤治療、分子標的療法、放射免疫療法、移植治療といったさまざまな選択肢から適切な 治療法選択と、Quality of Lifeを保った治療成績の向上を目指しています。

新規治療薬の治験を行っています。
2019年7月には、以下の10件(急性骨髄性白血病5件、悪性リンパ腫1件、多発性骨髄腫4件)の治験を実施しております。
・急性骨髄性白血病を対象としたキザルチニブ(AC220)の第Ⅲ相試験
・急性骨髄性白血病を対象としたNS-17の臨床第Ⅱ相試験
・急性骨髄性白血病を対象としたASP2215の第Ⅲ相試験
・急性骨髄性白血病を対象としたPKC412の第Ⅱ相試験
・急性骨髄性白血病を対象としたPKC412の第Ⅲ相試験
・悪性リンパ腫を対象としたcopanlisib(PI3K阻害薬)の第Ⅲ相臨床試験
・多発性骨髄腫患者を対象としたベネトクラクスの第Ⅲ相試験
・大量化学療法非適応の未治療多発性骨髄腫患者を対象としたVELCADE(ボルテゾミブ)、メルファラン及びプレドニゾン(VMP療法)とdaratumumab及びVMP療法の併用(D-VMP療法)を比較する第Ⅲ相、ランダム化、比較対照、非盲検試験
・骨髄腫に対するSAR650984の第Ⅰ/Ⅱ相試験
・造血幹細胞移植による初回治療が予定されていない未治療の多発性骨髄腫患者を対象にダラツムマブ、ボルテゾミブ、レナリドミド、及びデキサメタゾン併用とボルテゾミブ、レナリドミド、及びデキサメタゾン併用を比較する第3相試験

対象疾患・診療実績

代表的診療対象疾患

悪性リンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、成人T細胞白血病、再生不良性貧血、慢性骨髄性白血病、特発性血小板減少性紫斑病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、凝固異常症などを対象としています。

主要疾患の入院患者数 2018年1月-12月

  延べ入院患者 (人) 新規入院患者(人)
非ホジキンリンパ腫 495 131
急性骨髄性白血病 217 37
多発性骨髄腫 144 24
骨髄異形成症候群 152 23
造血幹細胞移植ドナー 16 14
特発性血小板減少性紫斑病 20 12
慢性骨髄性白血病 13 11
急性リンパ性白血病 47 8
ホジキンリンパ腫 11 7
再生不良性貧血 17 7
骨髄増殖性疾患 24 6
成人T細胞白血病リンパ腫 17 3
慢性リンパ性白血病 20 2
その他の疾患 96 43
総計 1289 328

(Table1)


お知らせ・その他

診療体制と実績

常勤血液内科医12名、(うち日本血液学会認定血液専門医7名、同指導医5名)、病床数67床、無菌室18床と、近畿圏で最大規模の血液内科で、日本血液学会認定施設です。

○外来診療

あらゆる造血器疾患を対象としています。悪性リンパ腫に対する標準的な化学療法は、感染の危険性が高度でなければ当院の通院治療センターにおいて外来で施行しています。他の疾患においても患者さんのQOL(生活の質)を重視し、できるだけ入院期間は短縮して、外来における抗癌剤治療を取り入れています。

○入院診療

医師、薬剤師、看護師、歯科衛生士、栄養士によるチーム診療を行っています。

地域の先生方へ

いつも患者さんをご紹介いただき、大変ありがとうございます。急性白血病など緊急を要する患者さんは、随時、受け入れています。当初の治療が終わり、病状がある程度安定した患者さんにつきましては、病診連携の観点から先生方に経過観察をお願い申し上げることがあると思います。その際は、どうぞ宜しくお願いします。

診療内容の特徴

入院患者さんの大部分は悪性リンパ腫(39.3%)、急性白血病(16.8%)、骨髄異形成症候群(11.8%)、多発性骨髄腫(11.2%)といった造血器腫瘍であり(Table1)、治癒をめざして抗癌剤治療、放射線治療、造血幹細胞移植等の積極的な治療を行っています。平成15年に臍帯血バンクの認定施設、平成16年に骨髄バンクの認定施設となっており、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植、HLA半合致移植のいずれの移植も施行可能です。

また、高齢者にも安全に移植治療ができるように、抗癌剤による前処置を軽減した「ミニ移植」も行っています。平成30年度の当科における造血幹細胞移植数は35で、内訳は骨髄移植数14、臍帯血移植数5、同種末梢血幹細胞移植数5、自家移植数11です。平成15年から30年までに当科で施行した同種移植数を以下にお示しします。
造血幹細胞移植数の推移

当院における治療成績の解析と今後の治療成績向上にむけて

治療成績向上のために当科では疾患ごとに詳細な治療成績の解析を毎年行っています。2004年1月以降に当科で初回入院治療を行った65歳以下の治療成績をFig.1~5に示します。

悪性リンパ腫の大多数を占める病型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では5年生存率(5生率)は87.0%であり、次いで多い濾胞性リンパ腫の5生率は95.1%といずれも良好な治療成績を認めています(Fig.1)。

Fig1

多発性骨髄腫は治癒困難な疾患であるものの、サリドマイド、ボルテゾミブ、レナリドミド、ポマリドミド、パノビノスタット、エロツズマブ、カーフィルゾミブ、イキサゾミブ、ダラツムマブといった新規薬剤の登場により、5生率は73.6%(Fig.2)と治療成績は向上しています。今後さらに、ベネトクラクス、イサツキシマブといった有望な新規薬剤が本邦で使用できるようになると期待されています。

Fig2

PML-RARα陽性急性前骨髄球性白血病(AML M3)はかつて予後不良でしたが、All-trans Retinoic Acidや亜ヒ酸の投与により5生率は89.8%と改善しています。しかし異形成を伴う急性骨髄性白血病の5生率は36.3%、AML M3と異形成を伴う急性骨髄性白血病以外の急性骨髄性白血病の5生率は59.3%といずれも予後が悪く、移植を含めた治療成績の向上や新薬の開発は喫緊の課題です(Fig.3)。予後不良とされるFLT3遺伝子変異陽性の再発難治性急性骨髄性白血病に対して、2018年12月に、FLT3阻害剤であるギルテリチニブが本邦で販売開始され、難治の急性骨髄性白血病の予後改善に寄与すると期待されています。

Fig3

Ph陰性急性リンパ性白血病の5生率は72.9%、Ph陽性急性リンパ性白血病の5生率は74.4%です(Fig.4)。以前Ph陽性群は陰性群と比較して予後が悪いとされていましたが、近年Ph陽性急性リンパ性白血病に対してダサチニブ、ポナチニブといった分子標的薬の使用によりPh陽性急性リンパ性白血病の予後は改善しています。さらに、2018年には急性リンパ性白血病に対する新薬が2剤登場しました。CD22を標的にするモノクローナル抗体のイノツズマブと細胞傷害性化合物のカリケアマイシンを組み合わせたイノツズマブオゾガマイシンや二重特異性T細胞誘導抗体であるブリナツモマブの登場により、従来の抗癌剤に難治の急性リンパ性白血病に対しても再度遺伝子学的寛解を得ている症例があるのは画期的です。
Fig4

成人T細胞白血病リンパ腫は非常に難治で通常の化学療法では3年生存率は13~24%と報告されていますが、当科では同種移植治療を積極的に行うことにより、5生率は46.0%と改善しております(Fig.5)。モガムリズマブ、レナリドミドといった薬剤が新たに使用できるようになったこともあり、今後のさらなる治療成績向上が望まれます。

Fig5