循環器内科
Department of Cardiology
科の特色・紹介
当科では、幅広く循環器疾患の診療を行っており、特に虚血性心疾患や末梢動脈疾患といった動脈硬化性疾患と、心不全および不整脈診療に力を入れております。診断においては、各種検査を効率的に組み合わせ、患者さんの負担が少なく正確な診断をつけるように心がけております。また、治療方針の決定に当たっては、心臓血管外科医やコメディカルを含む他職種から成るハートチームでのカンファレンスを行い、患者さんが納得して意思決定いただけるようなサポートに努めています。急性期から終末期の緩和治療まで全人的で継続的な診療を提供できるよう、かかりつけ医との連携を密に取り、循環型の医療「二人主治医制」での診療を進めています。さらに、安心してかかれる病院であるべく、緊急時には循環器医師が24時間365日受け入れ対応しております。
対象疾患
- 虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症など)
- 心不全(デバイス治療を考慮すべき重症心不全、不整脈が関連した心不全を含む)
- 弁膜症
- 心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症、二次性心筋症など)
- 閉塞性動脈硬化症、包括的高度慢性下肢虚血
- 大動脈疾患(大動脈瘤・大動脈解離など)
- 不整脈
洞不全症候群、房室ブロックなどの徐脈性不整脈
発作性上室性頻拍、心室頻拍などの頻脈性不整脈
上室性期外収縮、心室性期外収縮、心房細動、心房粗動などの不規則な不整脈
WPW症候群、ブルガダ症候群、QT延長症候群などの特殊な不整脈
- 肺塞栓症、深部静脈血栓症
- 先天性心疾患
診療実績
令和5年度
入院
延患者数 | 新入院患者数 | 一日平均患者数 | 平均在院日数 |
18,270人 | 1,462人 | 49.9人 | 10.8日 |
外来
延患者数 | 新外来患者数 | 一日平均患者数 |
---|---|---|
20,509人 | 1,335人 | 84.7人 |
治療件数
経皮的冠動脈形成術(PCI) | 276件 |
末梢血管治療(EVT) | 181件 |
経皮的心筋焼灼術(ABL) | 138件 |
経カテーテル的大動脈弁植え込み術 (TAVI) | 11件 |
ステントグラフト内挿術 (TEVAR/EVAR) | 21件 |
ペースメーカー植え込み(PMI) | 60件(21件) |
植え込み型除細動器(ICD)/皮下植え込み型除細動器(S-ICD) | 8件(13件) |
両室ペースメーカー付き植え込み型除細動器(CRT-D)/両室ペースメーカー(CRT-P) | 3件(4件) |
植え込み型ループレコーダー(ILR) | 4件 |
※()内は交換術の件数
検査数
冠動脈CT | 875件 |
FFR-CT | 214件 |
心筋血流シンチグラフィ | 156件 |
経胸壁心エコー | 7,512件 |
経食道心エコー | 162件 |
集団心臓リハビリテーション件数(延べ数)
外来 | 1,506件 |
入院 | 770件 |
当院の心不全入院患者数は年間300人を超え、大阪内で最も多くの心不全患者さんを診療する病院の一つです。医師、看護師、理学療法士、薬剤師がチーム一丸となり、最新の検査や治療方法を用いた診療を行っております。
虚血性心疾患の診断に必要な冠動脈造影検査については、すでに約33,000例を施行しています。また、カテーテルを用いた経皮的冠動脈形成術(バルーン拡張、ステント留置)は8,400例を超え、98%以上の成功率を収めています。以前は治療不可能とされていた高度石灰化病変や慢性完全閉塞病変といった複雑な病変に対しても、積極的に加療を行なっております。これには、ロータブレーターなど認定施設でのみ使用を許可された特殊機器を用い、安全かつ効果的な治療を行える体制を整えております。これらの検査・治療に関してはクリニカルパスを活用しており、冠動脈造影検査の場合は2泊3日、経皮的冠動脈形成術の場合は3泊4日の入院期間で検査・治療を行っております。
急性心筋梗塞や不安定狭心症、重症心不全、重症不整脈などはCCU(Cardiac Care Unit)に収容し、血行動態等を持続的にモニターしながら、薬物治療に加え、各種のインターベンション、大動脈バルーンパンピング(IABP)、持続的血液濾過法(CHDF)、経皮的心肺補助法(PCPS)等を用いて効果をあげています。急性冠症候群に対するカテーテル治療を用いた再灌流療法は、24時間施行可能で、急性心筋梗塞の院内死亡率は現在約5%にまで減少しています。
弁膜症、特に大動脈弁狭窄症に関しまして、令和5年度からTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)を導入いたしました。これにより、開胸することなくカテーテルを使用して人工弁の留置が可能となっております。
末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症、包括的高度慢性下肢虚血)に対しても積極的に取り組んでおり、カテーテル治療による血行再建術を多数施行しております。特に包括的高度慢性下肢虚血に関しては皮膚科・形成外科とチームを組み、血行再建術と組み合わせて、救肢率を高めています。
不整脈疾患の治療に対しても不整脈専門医を中心に積極的に取り組んでおり、24時間態勢であらゆる不整脈疾患を受け入れています。心臓電気生理学的検査、永久ペースメーカー植え込み術、カテーテルアブレーション、植え込み型除細動器(ICD)の植え込み、両室ペースメーカー(CRT-P)、両室ペースメーカー付き植え込み型除細動器(CRT-D)の植え込みなど行っています。カテーテルアブレーションにつきましてもクリニカルパスを活用しており、2泊3日での加療を行なっております。
心臓病で入院された患者様の退院後の社会復帰や再発予防および再入院予防に重要となるのが心臓リハビリテーションです。この心臓リハビリテーションは、薬物治療に匹敵する効果を有することが知られております。当院では、疾患に関わらず入院早期から専門の理学療法士による心臓リハビリテーションを行っています。また、通院でのリハビリテーション、看護指導、栄養指導を継続的かつ包括的に行う通院プログラムも確立しております。
お知らせ
臨床研究について
文献を調べて症例を深く掘り下げる、データを通じて検査や治療の結果を振り返る、診療の現場から生まれる疑問や発想を研究という形で追求するー医療の質の向上を目指し、将来の医療への懸け橋を築くための挑戦を続けることは、我々の大きな責務であると考えております。
当センターでは、これまで多くの症例検討、臨床研究を行い、それらの結果を国内外の学会の場で、あるいは学術論文として発表してきました。その内容は、心不全、急性冠症候群、糖尿病、下肢閉塞性動脈硬化症など、循環器領域疾患全般にわたります。最近では、京都大学をはじめとする研究機関と密に連携をとり、培養細胞や実験動物レベルの基礎研究成果を臨床の現場で確認・応用する探索研究(トランスレーショナルリサーチ)でも新しい成果が得られつつあります。また、我々のチームに新たに加わる若手医師達には、それぞれに合った独立した研究テーマを設定し、早い段階から研究活動をサポートし、国際学会や論文での発表を通じて医師としての可能性を広げることに、チーム一丸となって力を注いでいます。
臨床研究プロジェクト
- 心疾患患者における低侵襲モニタリングの有用性に関する臨床研究
- 心不全バイオマーカーの探索的プロジェクト
- 病的心臓における構造変化、分子発現解析
- カテーテルインターベンション施行後の動脈合併症に関する解析
- 薬剤溶出性ステント留置後の内膜増殖に対する薬理作用
- 糖尿病と心血管機能の関係
他施設共同臨床研究
GOREISAN-HF、Current AS/Current AS 2、J-ROAD NEXT、Mystics、PREVAIL-HCM、KCHF registry、STOP DAPT/STOP DAPT2/STOP DAPT 3、CREDO-KYOTO/CREDO-KYOTO 2、研究など
地域の医療機関の先生方へ
- 令和5年度
紹介率 92.6% / 逆紹介率 255.7%
当科では、より多くの患者さんの診療を担当させていただくために、病状の安定した方の定期診療をお願いしております。緊急時には、ホットライン(06-6774-5300) にご連絡いただくことで迅速な対応ができる体制を整えております。
また病診連携のための定期的な研究会や勉強会を開催させていただき、先生方との意見交換を通じ、より良い医療の提供ができればと考えております。ご参加をお待ちしております。
研修医・専攻医の皆さんへ
当院は、交通立地もよく広い地域から多くの患者紹介があり、様々な症例を経験することができます。症例ごとに各専門領域の指導医やスタッフから指導・助言を受けられ、診療スキルの向上が図れます。また、朝夕行われるカンファレンスを通じて、救急症例や入院患者の情報を共有しており、問題解決のための実践的知識も学べます。循環器内科で重要な手技全般についても、指導医のもと段階的に経験を積んでもらいますので、積極的な姿勢で取り組んでください。
部長 林 富士男
問い合わせ先 人事課研修係 kensyu@osaka-med.jrc.or.jp