がんゲノム医療についてGENOME

「がんゲノム医療外来」についてのご案内

がん遺伝子パネル検査とがんゲノム医療

がんは正常細胞の遺伝子が変異し、細胞の増殖が止まらなくなって発症します。「がん遺伝子パネル検査」は、がん細胞に起こっている遺伝子変異を調べる検査です。がんの病理組織ないしがんからもれ出した血液中のDNAを抽出、解析することにより、発がんにかかわる数百の遺伝子を一度に調べます。「がんゲノム医療」とはその遺伝子変異に基づいて、抗がん剤治療を行うことです。当院は、2018年4月に「がんゲノム医療連携病院」として厚生労働省に認定され「がんゲノム医療中核拠点病院」である京都大学医学部附属病院と連携して「がんゲノム医療」を実施しています。現在5種類の「がん遺伝子パネル検査」が一定の条件を満たすがん患者さんに保険適用となり、当院では3種類の検査を実施しています。「がん遺伝子パネル検査」の結果の解釈は難解であり、多職種から成る専門家会議である「エキスパートパネル」で検討が必要です。その結果に基づいてそれぞれの患者さんに適した薬剤や、適格性を満たした場合は治験※、患者申出療養制度※をご提案します。患者さんにより異なる発がんの機序を遺伝子レベルで知り、治療方針を選択することで、プレシジョンメデシン(精密医療)を実現します。

※治験:「治療の臨床試験」の略。抗がん剤の保険承認を得るために有効性や安全性を確認するための試験。

※患者申出療養制度:一定の条件を満たす患者さんを対象に、製薬会社が提示する特定の薬剤の提供を無償で受けることができます。利用できるのは「エキスパートパネル」で推奨された薬剤に限られます。臨床研究として行われ、薬剤費はかかりませんが、研究支援者の人件費等の費用がかかります。京都大学医学部附属病院で参加する場合、約57万円です。

以上の要点をまとめた院内配布用のパンフレットを掲載しますので、ご参照ください。

がん遺伝子パネル検査とがんゲノム医療
院内で配布しているパンフレット

また、がん遺伝子パネル検査については、国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の「がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査」ウェブサイトでも紹介されていますので、ご参照ください。

がんゲノがんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査

<リンク先>がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査(国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター)

保険診療でのがん遺伝子パネル検査の対象となる方

保険診療で検査をおこなうには一定の条件を満たす必要があります。

  • 「原発不明がん」または「標準治療終了見込みの固形がん※」の方
  • 軽作業ができる以上にお元気な方
  • 3年以内のがん病理組織ないし血液検体の提供が可能な方

※ 固形がん:がんのうち、白血病やリンパ腫などの血液のがんを除いた、かたまりを作って増殖するタイプのがん。例として胃がん、肺がん、乳がんなど。

がん遺伝子パネル検査を受けるにあたり知っておいていただきたいこと

保険診療で検査を行うには一定の条件を満たす必要があります。

  • 検体はがん組織の病理組織または血液です。
  • 検査提出から検査結果がでるまで約8週間かかります。
  • 検査結果により治験や患者申出療養制度による治療がご提案できる可能性がありますが、可能性は1割程度です。また結果に従い治療しても効果がでるとはかぎりません。
  • 遺伝子検査により、遺伝性腫瘍※が見つかることがあります。

※遺伝性腫瘍:家族性腫瘍ともよばれます。生まれつきがんになりやすい体質を受け継いでおり子や孫に遺伝する可能性のある腫瘍のこと。遺伝性乳がん・卵巣がんがよく知られています。

がんゲノム医療外来の受診から結果説明までの流れ(図)

  • 当院で通院中の患者さんの場合、現在がん治療中の診療科の主治医にがんゲノム治療についてご相談のうえ、がんゲノム医療外来予約の手続きをしてもらってください。予約後は、本館4階のがんゲノム医療外来を受診して「がん遺伝子パネル検査」についてご相談ください。他施設から紹介で受診する患者さんの場合、現在、通院している病院の主治医にがんゲノム治療についてご相談のうえ、がんゲノム医療外来の予約手続きをしてもらってください。
  • すでに採取済みのがん組織検体を病理専門医が評価し、検査の適否を判断します。血液検体で検査する場合もあります。
  • がんゲノム医療外来受診後、検査を受けるかご検討いただき、希望される場合は同意書に署名してください。
  • 検査会社へ検体を提出します。
  • 約4週間後、検査会社から解析結果が当院に返送されます。
  • 返送された結果をもとに、エキスパートパネル(専門家会議)で推奨できる治療法を検討します。
  • エキスパートパネルの結果に基づき、がんゲノム医療外来にて患者さんに今後の治療法の提案を行います。(検査申し込み後約8週間)
  • 担当医による説明・同意

  • 腫瘍組織の準備

  • NGS(次世代シーケンサー)による遺伝子異常検出

  • エキスパートパネル

  • 担当医による結果説明
    治療選択

検査費用

3割負担の場合、申し込み時に約132,000円、結果説明時に約36,000円の検査費用(令和5年12月時点)が必要になります。治療費は含まれません。

※ 上記の検査料金以外に保険適用で再診料などの医療費がかかります。

保険適用で行うがん遺伝子パネル検査

令和5年12月現在、当院では、保険適用検査の5種類のうち3種類の検査を実施しています。それぞれに特徴がありますので、患者さんに適した検査法を選択します。

がん病理組織を用いる検査

  • NCCオンコパネル
  • ファウンデーションワンCDx

血液検体を用いる検査

  • ファウンデーションワンリキッド CDx

よくある質問

家族だけでも受診は可能ですか?

患者さん本人に受診いただく必要があります。

検査結果がわかるまでにどれぐらいの時間がかかりますか?

約8週間かかります。

検査で治療法が見つかる可能性はどれぐらいですか?

約1割程です。また、見つかった薬剤が必ずしも効果が得られるわけではありません。

遺伝性腫瘍が見つかったらどうしたらいいでしょうか?

患者さん、ご家族が今後についてしっかり考えていけるよう、遺伝カウンセラーによる相談支援を行っています。

相談窓口

がんゲノム医療に関するご相談はがん相談支援センターへ直接お越しいただくか、電話やメールでお受けしています。

場所 本館2階 がん相談支援センター
電話受付時間 8:30~16:00
電話(直通) 06-6774-5152
E-mail syakaika@osaka-med.jrc.or.jp

※ がんゲノム医療外来受診についての申し込み(予約)等は、がん相談支援センターではご対応できませんので、現在がん治療中の診療科の主治医へご相談ください。

がんゲノム医療外来への紹介をご検討の先生方へ

保険診療で行うがん遺伝子パネル検査について

がん遺伝子パネル検査によるがん遺伝子変異の解析をもとに標準治療後の抗がん剤を検討するのが、現在のがんゲノム医療です。大阪赤十字病院はがんゲノム医療連携病院に指定されており、がんゲノム医療中核拠点病院である京都大学医学部附属病院と連携してがん遺伝子パネル検査を実施しています。現在、保険承認されたパネル検査はがん組織を用いるNCCオンコパネルとFoundationOne® CDx、血液検体を用いるFoundationOne® LiquidCDxの3つです。検査結果により、他がん種で承認されている薬剤や、有望な治験がご提案できる可能性があります。本院のがんゲノム医療外来は、現在がん診療を受けている主治医から大阪赤十字病院 医療連携課を通してご予約いただきます。

保険診療でのがん遺伝子パネル検査の対象となる方

保険診療で検査を行うには一定の条件を満たす必要があります。

  • 「原発不明がん」または「標準治療終了見込みの固形がん※」の方
  • 軽作業ができる以上にお元気な方
  • 3年以内のがん病理組織ないし血液検体の提供が可能な方

※ 固形がん:がんのうち、白血病やリンパ腫などの血液のがんを除いた、かたまりを作って増殖するタイプのがん。例として胃がん、肺がん、乳がんなど。

受診にあたって

以下の点をご確認、ご署名ください。患者様との情報共有もお願いします。

別紙2 がん遺伝子パネル検査適応チェックリスト

がん遺伝子パネル検査のための検体の取扱い

がん遺伝子パネル検査は次世代シークエンサー(NGS)を用いて解析を行うため、品質の担保された核酸を充分量抽出する必要があります。そのため以下の条件を満たすホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックのご提供をお願いいたします。

検体について

  • 固定不良が疑われる、出血や壊死の多い検体は選択しないでください。
  • 脱灰している場合、中性脱灰液を使用していることをご確認ください。
  • 推定腫瘍細胞含有割合:30%以上(肝臓の場合は60%以上)
  • 切片表面の表面積:
    FoundationOneCDx がんゲノムプロファイル;25mm2以上
    OncoGuide NCCオンコパネルシステム;16mm2以上

下記の場合、検体不良で検査がうまくいかない場合があります。

  • 酸脱灰している標本
  • 腫瘍細胞割合・量が極端に少ない標本
  • 10%中性緩衝ホルマリン以外の緩衝作用のないホルマリンや、酸性ホルマリンで固定された標本
  • ホルマリン固定時間が長い(72時間を超える)標本
  • 標本作製後3年以上経過している標本
  • 過去に受けた放射線治療の照射範囲に含まれていた組織の標本

注意事項

  • FFPEブロックの梱包時にはブロック変形が起こらないように、余裕を持たせてください。FFPEブロックの変形により、標本作製がうまくできず、検査ができなくなる可能性があります。
  • 病理検体チェックリストの内容によっては、検体が使用できない可能性があります。
  • 検査結果説明後に借用したFFPEブロックは返却いたします。
  • FFPEブロックの組織残量によっては、組織をすべて使用する場合もありますことをご了承ください。
  • 血液検体でのがん遺伝子パネル検査をご希望の場合は組織検体を採取できない理由を診療情報提供書に記載してください。
  • 条件が整えば受診当日がん遺伝子パネル検査申込みが可能ですが、資料ご提出状況その他により当日検査申込みできない場合があります。

がんゲノム外来受診の流れ

  • 医療連携課に提出資料を全て送付してください。
  • 病理検体も含め、全ての提出資料を受領したタイミングで受診予約日を確定します。
  • 予約日にがんゲノム外来受診、条件が整えば当日、状況により後日、検査を申込みます。
  • 約2ヶ月後結果がでた時点で患者様に電話連絡、結果説明の外来受診の予約を行います。
  • 予約日に結果説明、新たな治療選択肢があればご提示、ご希望があれば治療します。

提出資料について

提出資料※別紙1~5はダウンロードしてください。

・ 別紙1 診療情報提供書(本院紹介全科共通)

・ 別紙2 がん遺伝子パネル検査適応チェックリスト

・ 別紙3 がん遺伝子パネル検査臨床情報提供書

・ 別紙4 病理検体送付兼受領書

・ 別紙5 病理検体情報提供書

・ 直近のCT等電子画像と読影レポート

・ FFPE代表1ブロック

・ 病理診断報告書コピー

の資料は、血液検体による検査の場合は不要です。

※提出資料の送付においては、病理検体が含まれますので、郵便または宅急便(ワレモノ、室温)にて、追跡可能な方法で送付してください。
提出書類が全て到着してから土日祝を除く平日5日後以降にがんゲノム外来予約をお取りします。受診までに病理標本の評価をさせていただきます。

ご不明な点はお気軽にご連絡ください。

お問い合わせ先

〒543-8555大阪市天王寺区筆ケ崎町5-30
大阪赤十字病院 医療連携課 がんゲノム外来担当者

TEL : 06-6774-5132 FAX : 06-6774-5031