各がんの解説EXPLANATION

多発性骨髄腫

  

多発性骨髄腫について

骨髄には形質細胞という血液細胞が少数存在しています。この形質細胞は免疫力を司る細胞であり、ウイルスなどの病原体が身体に侵入した時に「抗体」という蛋白質を作り出して病原体を攻撃し、身体を病原体から守っています。多発性骨髄腫という疾患は、この形質細胞が癌化してしまう疾患です。部位別癌の罹患率は男性5.8人、女性4.8人(2014年人口10万人対)とまれな病気です。年齢階級別罹患率は以下のグラフの通りで、高齢者に多くみられます。

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多発性骨髄腫の症状について

(1)血球減少に伴う症状

形質細胞は癌化すると骨髄の中で増殖します。その結果、骨髄の本来の機能である造血(赤血球、白血球、血小板を作ること)が阻害され貧血(赤血球が減ること)が起こり、倦怠感や運動時の息切れや目まいといった症状が生じます。また血小板が減少すると出血しやすくなり、ぶつけた覚えもないのに青あざができたりします。

(2)骨症状

癌化した形質細胞は骨に働きかけ、骨からカルシウムを溶出させます。その結果、骨はもろくなり骨痛を生じやすくなります。さらに、ちょっとした外力が加わっただけで容易に骨折するようになります。
また、骨からカルシウムが溶出する結果、血液中のカルシウムの量が増加して高カルシウム血症が生じます。これにより尿量が増加し脱水症が起こります。高カルシウム血症が重症になると意識障害を生じます。

(3)M蛋白による症状

形質細胞は元々「抗体」という蛋白質を作る細胞ですので、癌化した後でも「抗体」のような蛋白質を作る場合が多いです。この「抗体」のような蛋白質のことをM蛋白と呼びます。M蛋白が産生されるために血液粘度が上昇し(=血液がドロドロになり)、細い血管の血流が阻害されます。血流障害が目で起これば視力障害や複視が、脳で起こればふらつきや頭痛が生じます。また、M蛋白の分解産物であるベンスジョーンズ蛋白は腎障害を起こし、アミロイドが全身臓器に蓄積するとアミロイドーシスという病態を起こし生活の質が低下します。

多発性骨髄腫の診断について

骨髄検査を行い形質細胞が増加していることを確認し、臓器障害(腎障害、高カルシウム血症、貧血、骨病変)が存在することを確認すれば診断に至ります(仮に臓器障害がなくてもバイオマーカーと呼ばれる特徴があれば診断に至ります)。

多発性骨髄腫の治療について

骨髄腫の治療はこの10年で各種薬剤が新規に開発され、飛躍的に向上しています。
65歳未満で自家末梢血幹細胞移植術の適応となる患者さんでは、まず寛解導入療法によって深い寛解に導入することを目標とします。寛解導入療法として当院ではVRD療法(ボルテゾミブ+レナロリドマイド+デキサメサゾン)、CyBorD療法(ボルテゾミブ+デキサメサゾン+シクロフォスファミド)をよく選択します。次いで末梢血幹細胞採取術を行い十分な量の造血幹細胞を採取することができた場合は、自家末梢血幹細胞移植術を施行します。年齢や合併症のため自家末梢血幹細胞移植を施行できない患者さんや希望されない患者さんでは、2-4剤併用の化学療法(D-VMP療法、D-Rd療法、VRD療法、VMP療法、MPT療法、BD療法、Ld療法)を施行して深い寛解を目指した治療を行います。残念ながら再発してしまった患者さんでは、新規プロテアソーム阻害薬であるカルフィルゾミブ、イキサゾミブ、免疫調節薬であるポマリドミド、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるパノビノスタット、抗体薬であるダラツズマブ、エロツヅマブ、イサツキシマブといった新規薬剤も使用して治療を行います。併用療法に関しては、再発難治症例にダラツズマブとカルフィルゾミブの併用が可能となり、また、投与法についてはダラツズマブ皮下注射剤が開発され、副作用の軽減や薬剤投与に要する時間が大幅に短縮されるなど、今後のさらなる治療成績の向上が期待されます。また、骨髄腫の臓器症状に対してもそれぞれ治療を行います。腎障害が高度であれば腎臓内科に治療介入を依頼します(重症の腎不全に至っている患者さんでは透析療法が必要となることがあります)。
骨病変に対してはビスホスホネート製剤(ゾレドロン酸)やRANKL抗体(デノスマブ)を用いて骨吸収を抑制し痛みに対して各種の鎮痛剤を投与しますが、痛みが非常に強い場合には放射線治療科と相談して必要な場合には放射線療法を行い疼痛の緩和や骨折の予防を行います。また、骨痛があると臥床がちとなるため筋力低下を招いて歩行をはじめとする日常生活動作が困難となる場合があります。そのため、リハビリテーション科に相談して生活の質の改善、あるいは自宅への退院や通院治療へのスムーズな移行を目的としたリハビリテーションも実施してもらっています。