各がんの解説EXPLANATION

骨髄異形成症候群

            

骨髄異形成症候群について

骨髄異形成症候群では、骨髄にある造血幹細胞(すべての血球すなわち赤血球、白血球、血小板の元になる細胞)に異常が生じるために骨髄が血球をうまく作れなくなります。そのため、血液検査を行うと赤血球、白血球、血小板の1-3種類の減少が認められます。症状はそれぞれの血球減少によるものとなります。すなわち、白血球が減少すれば免疫力が低下して感染症に罹患しやすくなりますし、赤血球が減少すれば貧血症状(倦怠感、動悸、息切れ、めまい)が生じます。また血小板が減少すると出血を止めることが難しくなり出血傾向(鼻出血あるいは脳出血など)を生じることがあります。
また一部の患者さんは急性骨髄性白血病に進行することがあることから、前白血病状態とも呼ばれることがあります。有病率は10万人あたり約3人、患者さんの年齢の中央値は65歳、男女比はおよそ2:1とされています。

骨髄異形成症候群の診断について

血液検査と骨髄検査の結果をWHO分類あるいはFAB分類に照らし合わせて、特徴が合致すれば診断に至ります。

骨髄異形成症候群の治療について

5q-症候群(5番目の染色体の一部欠失)という病型の患者さんはレブラミドという薬剤による治療を考慮します。それ以外の病型では、まず国際予後スコアリングシステム(IPSS) あるいは改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)を用いて、患者さんが低リスク群(IPSSのLow risk群/Int-1群、IPSS-RのVery low risk群/Low risk群/intermediate群)、あるいは高リスク群(IPSSのInt-2群/High risk群、IPSS群のintermediate群/High risk群/Very high risk群)のいずれに該当するかを判定します。各種の治療法の中で、根治が期待できるのは同種造血細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、さい帯血移植)のみですので、条件を満たしている患者さんには適切なタイミングで計画され提示し、患者さんが実施を希望される場合は実施します。血球減少に対する輸血療法や、輸血後の鉄過剰症に対するキレート療法といった支持療法はリスク群に関わらず、必要に応じて実施します。

(1)低リスク群

この群の患者さんは予後が比較的良好であるため原則として同種造血幹細胞移植は実施せず、以下にお示しするような各種治療法により血球減少の改善を図ることで治療します。エリスロポエチン製剤(赤血球増加を促進する)は一部の患者さんで貧血の改善が期待できますし、好中球減少症に対してはG-CSF製剤(好中球増加を促進する)を使用することがあります。骨髄が低形成である患者さんや微小PNH型血球が陽性である患者さんではシクロスポリンあるいは抗胸腺細胞グロブリンによる免疫抑制療法により血球減少の改善を図ることがあります。上記治療を行っても病気が進行してくる場合は、高リスク群と同様にアザシチジンなどによる化学療法を検討し、条件が許される場合は同種造血幹細胞移植を立案・ご提案する場合があります。

(2)高リスク群

この群の患者さんは予後が不良と推定されるため、年齢(通常は65歳以下)や合併症といった諸条件が許容される場合は同種造血幹細胞移植を立案します。そして患者さんが移植を希望された場合はドナーの検索などの準備を開始します。血縁者や骨髄バンクにドナーを求めた場合、ドナーが見つかるまで通常は数ヶ月の期間が必要となります。この間に病気が進行しない患者さんでは特に化学療法は行わないことも多いですが、病気に勢いがあり急性白血病に進行しつつあるような患者さんでは化学療法を行う場合もあります。その場合に考慮される化学療法のレジメンとしてIDA/AraC療法(イダマイシン、シタラビン)やDNR/AraC療法(ダウノマイシン、シタラビン)、CAG療法(アクラルビシン、シタラビン、G-CSF)、アザシチジン療法などがありますが、どのレジメンを選択するかは個々の患者さんのご病状や併存疾患などを考慮の上で決定しています。条件が満たされない、あるいは希望されないために同種造血細胞移植が実施しない患者さんの場合の治療は支持療法(輸血療法や感染症の治療や予防など)が主体となりますが、実施可能な場合には化学療法の一つであるアザシチジン療法が考慮されることがあります。アザシチジン療法を行うことにより、血球減少が改善したり、白血病への進行が遅らされたりするといった効果があることが過去の報告で示されているからです。