各がんの解説EXPLANATION

胃がん

  

胃がんについて

胃がんは日本人が罹患するもっとも多いがんのひとつで、かつて胃がんは日本人のがんによる死亡数のなかで第1位でしたが、最近では肺がんに続き第2位、女性は第4位となっています。これまでに毎年5万人前後の方が胃がんによって亡くなっていましたが、2014年以降は年間4万6千人前後に減少しています。後述するヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法が2013年に保険適応され、また早期発見のための診断技術や治療法が新たに開発されたことが寄与していると考えられています。
胃がんは、胃の内側の粘膜に発生し、粘膜下層、筋層、そして胃壁の外側へ向かって進行します。胃の粘膜、および粘膜下層にとどまるものを早期胃癌といい、それよりも進行すると進行がんと定義されています。

胃がんの危険因子について

喫煙や食生活などの生活習慣や、ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染などが胃がん発生のリスクを高めると報告されています。食生活については、塩分の多い食品の過剰摂取や、野菜、果物の摂取不足が指摘されています。ヘリコバクター・ピロリ菌は幼少期に感染し、胃の中にすみつきますが、衛生環境が整った現在では感染率が低下してきています。しかしながら、衛生環境が不十分であった頃に幼少期を過ごした50歳以上の世代は70-80%近くが感染していると言われます。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染した人のすべてが胃がんになるわけではありませんが、2013年からはヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法が保険適応として承認されましたので、定期的な胃の検診と除菌療法を受けることが推奨されています。

胃がんの症状について

胃がんでみられる症状に特有なものはありません。早期胃がんの場合は症状がなく、検診などで偶然見つかることも多くみられます。がんが進行してくると腹痛、腹部不快感、食欲低下、吐き気、嘔吐、胸やけなどがみられますが、普段、胃の調子が悪いときや、ほかの胃腸の疾患でも経験する症状です。さらに進むと、がんそのものからの出血によって吐血や黒色便などの出血症状が出現し、全身の倦怠感、体重減少などの症状が出現する場合があります。胃腸の症状に応じて市販薬を飲んで様子を見たり、無症状だからといって健康を過信したりすることは避けて、まずは医療機関で検査や検診を受けることが重要です。

胃がんの早期発見について

内視鏡(いわゆる胃カメラ)検査を受けていただくことで胃がんを早期に発見することができます。近年の技術革新によって、胃の粘膜の表面や微小な血管を詳細に観察することが可能となり、胃がんに対する診断の精度がとても向上しました。具体的にはNBI(Narrow Band Imaging)という特殊な画像診断技術を用い、がん表面の模様や微小な血管のパターンを観察することで、その場でがんの診断を行うことができるようになったのです。最終的には、内視鏡に挿入した鉗子で胃粘膜の表面をつまんで採取した組織を顕微鏡で確認することで確定診断しますが、がんを発見して診断するまでのプロセスがこれまでと大きく変わりました。当院では全ての内視鏡検査をNBI観察機能がついた最新の機器によって行っているため、早期胃がんの発見がより正確に行えるようになっています(図1)。
内視鏡で発見された胃がんの進行度(ステージ)については、超音波内視鏡や腹部エコー、腹部CT検査などで評価します。早期に治療方針を決めるために、胃がんと診断された後はこれらの検査を迅速に行います。すでに胃がんと診断されて紹介受診された場合でも、受診当日から進行度を確定するための検査を開始し、治療方針決定までの時間を短縮できるように最善の対応をとるよう努めています。

胃がんの早期発見について:画像1

通常の内視鏡観察による早期胃がんの発見。 黄色矢頭の範囲ががん部です。

胃がんの早期発見について:画像2

NBI観察による診断。 特殊なフィルターを用いて画像の処理をすることで早期胃がんの範囲が特定できます。

胃がんの早期発見について:画像3

近づいて拡大観察することでがんの広がりや深さなどが同時に判断できます(点線)。

図1 NBI観察による胃がんの診断

胃がんの治療について

胃がんと診断された後は、その進行度によって日本胃癌学会の胃癌治療ガイドラインに基づき治療方法を選択します。進行の度合いが初期であれば内視鏡による治療が選択されます。内視鏡で切除できないと判断された場合は外科手術や抗がん剤治療を選択します(図2)。

胃がんの治療について:画像
図2 胃がんの進行度(ステージ)と治療方法

日本イーライリリー株式会社 胃がんの治療をご理解いただくためにより

内視鏡的切除術

早期の段階で胃がんが見つかった場合は内視鏡治療による局所治療で胃がんを切除することで、根治(がんを治す)を目指すことができます。この場合、内視鏡的切除術の場合には、口から挿入した内視鏡によって胃の内腔でがん部を切り取るため、体の表面(皮膚)を傷つけることなく治療することができます。内視鏡的切除術は胃をそのまま残すことができるため、胃がん治療の中で最も負担の少ない治療と言えます。内視鏡治療の適応となる胃がんについては、リンパ節転移がないことが条件となりますが、近年その条件が緩和され適応が広がっています。内視鏡治療は高度な技術と経験が必要ですが、当院では内視鏡専門医・指導医による正確かつ安全な手技により良好な治療成績を得ています。内視鏡治療にはEMRとESDの2種類ありますが、より確実に大きく切除できる方法(ESD)を積極的に行っています(図3)。当院の年間治療件数はおよそ150件で関西でも屈指の治療件数です。

内視鏡的切除術:画像1

早期胃がんのまわりに印をつけて、その周囲を内視鏡から挿入した処置具で切開していきます。

内視鏡的切除術:画像2

がん部の下層を丁寧に剥離していきます。

内視鏡的切除術:画像3

早期胃がんの切除後状態です。

図3 早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

外科手術

内視鏡治療の適応とならない場合は外科手術を行います。外科手術については当院外科のページで詳しく紹介していますが、腹腔鏡と後に述べるロボット支援手術での手術を基本としています。腹腔鏡による手術は開腹手術に比べておなかの傷がほとんど目立たないということが利点としてあげられますが、出血量が少なく、また腸の運動が早く回復することや入院期間の短縮などの有用性も報告されています。熟練した外科医による操作が治療成績に影響するといわれますが当院では年間の手術件数が非常に多く、常にその技術を維持しています。腹腔鏡手術にはこのような長所があるものの、長い鉗子を使用して手術を行うには操作に慣れや熟練が必要であること、また人間の手指のように関節がない道具では、縫合操作など繊細な作業は難度が高くなるという弱点も指摘されております。こうした弱点を克服して腹腔鏡手術の精度をさらに向上させるために、近年「手術支援ロボット」が開発され、当院でも導入しています。ロボット支援手術では、操作の自由度が増すだけではなく、映像も3次元となり、従来の腹腔鏡よりも奥行や立体感がつかみやすくなっています。また、操作鉗子の手振れを補正する機能がついているため、手術部位をさらに拡大して従来の腹腔鏡手術よりも、精密な手術が可能になり、温存するべき重要な臓器や神経を傷つけることなく確実にがん・リンパ節を切除することが可能になります。日本でのロボット支援手術は消化器外科領域では2018年4月より胃がんに対し、一部の先進的施設で健康保険が適応となり、ロボット支援胃切除術が保険診療で行える限られた施設のひとつとなっています。

化学療法(抗がん剤治療)

化学療法は、様々な患者さんを対象に行いますが、①術前に微小転移の抑制や病巣の縮小を狙って行う術前化学療法、②手術後のstage II/IIIの患者さんに再発予防と予後改善を期待して行う術後補助化学療法、そして③外科的な切除ができないと判断した場合や切除後に再発した場合に行う化学療法に分かれます。最近の進歩によりこの化学療法は高い腫瘍縮小効果を実現できるようになりました。患者さんの状態に合わせて治療効果の高い抗がん剤を選択していきます。抗がん剤の多くは、外来での継続治療が可能ですので、主治医と相談しながら治療方法を決めていきます。③の化学療法も通院で行うメリットとして、時間を有効に使える、経済的な負担も軽減できることが挙げられます。当院では、通院しながらの化学療法は一括して外来通院治療センターで行っています。胃がんの化学療法も、腫瘍内科の専門医と、消化器内科・消化器外科の担当医が密に連携しながら、安全面と効果面を慎重に判断しながら治療を進めるようにしています。

院内がん登録統計

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