遺伝診療GENETIC

「遺伝診療部門」についてのご案内

がん治療において、近年、保険診療によるコンパニオン診断(※1)としてのがん遺伝子検査やがんゲノムパネル検査(※2)等による各種がんの治療が普及しており、その中には、遺伝性腫瘍(※3)に関連した遺伝学的検査(遺伝性乳癌卵巣癌症候群に対するBRCA1/2遺伝学的検査や、リンチ症候群に対するマイクロサテライト不安定性(MSI)検査などの、血縁者に引き継がれる可能性のある遺伝子の変異を調べる検査)が含まれています。

また、先天性疾患や指定難病に対する遺伝学的検査とサーベイランス(※4)のニーズも高まっています。

これらの検査によって病的バリアント(※5)が判明した発端者(病的バリアントが判明した本人)とその血縁者や、がんゲノム検査により二次的所見(遺伝性腫瘍に関連した遺伝子の変化)疑いの症例が増えています。

これらの遺伝学的検査は患者さんの治療だけでなく、未発症の血縁者の方にも大きく関わることですので、遺伝学的検査の結果及び結果開示や、サーベイランス方法を統括する部門が必要となり、遺伝診療部門が設立されました。

(※1)特定の治療薬が患者さんに効果があるかどうか、治療の前にあらかじめ検査すること。
(※2)がんの発生に関わる複数の「がん関連遺伝子」の変化があるかどうかを一度に調べる検査のこと。
(※3)遺伝的要因がより強く影響しているがんのこと。がんの種類によるが、がん患者さんの約1割は遺伝性腫瘍(遺伝性のがん)といわれている。遺伝性腫瘍は遺伝学的検査によって確定診断される(*遺伝学的検査:遺伝子に生まれつき病気に関わる特徴があるかどうかを調べる検査)。遺伝性腫瘍についての更に詳しい情報がページ下部に掲載されていますのでご参照ください。
(※4)遺伝学的検査で病的バリアントが判明し、遺伝性疾患の発症リスクが高いと推定された方に対して、きめ細かく計画的に、病気の早期発見を目的として継続的に提供される検査のこと。
(※5)ヒトが持つゲノム配列のうち、個々人での配列の違いをバリアントと呼び、病的バリアントは、病気の発症原因となるバリアントのこと。

遺伝診療部門の対象疾患及び対象者について

1)遺伝性腫瘍:遺伝性乳癌卵巣癌症候群(BRCA1/2遺伝子陽性)、リンチ症候群(MSI陽性)

※本来は多くの遺伝性腫瘍が存在しますが、当院では頻度の多い上記の疾患を対象とし、今後、対象疾患は拡大する予定です。
①保険診療で実施している遺伝学的検査で病的バリアントを認めた患者さん
②遺伝学的検査で病的バリアントを認めた患者さんの血縁者
③がんゲノムパネル検査の二次的所見が判明した患者さんとその血縁者

2)小児科・内科系遺伝性疾患の患者さんとその血縁者

今までの実績として、Dravet症候群、シトリン欠損症、X連鎖性魚鱗癬症候群、Prader-Willi症候群、brain-lung-thyroid disease、Potocki-Lupski症候群、ファブリー病、アルポート症候群などの患者さんとその血縁者に対して、遺伝学的検査や遺伝カウンセリングを実施しています。

遺伝診療部門の役割について

遺伝診療部門の窓口医師(乳腺外科、産婦人科、消化器内科、泌尿器科、新生児・未熟児科/小児科)と認定遺伝カウンセラーが、下記の内容を対応しています。

①遺伝学的検査を実施するか悩む方などの意思決定支援のために遺伝カウンセリングを実施します。

②病的バリアント検出の患者の血縁者に対して、自費での遺伝カウンセリング、遺伝学的検査、サーベイランスを実施します。

③遺伝診療部門カンファレンスを定期的に開催し、遺伝学的検査実施症例の検討、遺伝学的検査の結果開示やサーベイランス運用の安全管理を実施します。

問い合わせ窓口

乳腺外科、産婦人科、消化器内科、泌尿器科、新生児・未熟児科/小児科に遺伝診療部門窓口医師を配置しています。
まずは各診療科の主治医や看護師にご相談ください。

「遺伝診療部門」についてのご案内

【遺伝性腫瘍の特徴】

本人や血縁者にこれらの特徴が一つでも当てはまる場合は、遺伝性腫瘍について検討が必要です。これらの特徴がみられない場合もあります。

  • 比較的若い年齢でがんを経験、ひとりで複数のがんを経験
  • 2つある臓器の両方にがんを発症
  • 家系内に特定のがんを発症した人が複数いる
  • 遺伝性腫瘍に特徴的ながんの発症

遺伝子の特徴の受け継がれ方

遺伝性腫瘍の場合、遺伝子の受け継がれ方は、主に常染色体顕性遺伝という形式です(※1)。

人はほとんどの遺伝子を2つ1組で持っており、父親と母親から1つずつ、受け継いでいます。親のどちらかが、遺伝性腫瘍の原因となる遺伝子の特徴を持っている場合、それが子どもに受け継がれる確率は、2分の1(50%)の確率です。性別によって確率が変わることはありません。

(※1)遺伝子によっては、別の遺伝形式をとるものもあります。

遺伝子が親から子に受け継がれる組み合わせの一例

(上図は、父親が病的変異をもつ遺伝子を持っている例を示していますが、母親が病的変異をもつ遺伝子を持っている場合もあります)

遺伝性腫瘍と分かった場合は・・・

【ご本人に対して】

結果に応じたサーベイランス(遺伝子の特性に応じた定期的な検査)やリスク低減処置(がんが発症する前に手術を行い、対象部位を摘出すること等)の計画が可能となります。

サーベイランスの内容・開始年齢・頻度などは遺伝子によって異なります。

【血縁者に対して】

血縁者も同じ遺伝子の特徴を持ち、がんになりやすい体質である可能性があります。

同じ遺伝子の特徴を持っているかどうかは、遺伝学的検査で調べることができます。血縁者の場合、家系内で見つかった遺伝子の特徴の有無を調べる遺伝学的検査を受けることができます。

血縁者についても、遺伝学的検査を行うことで遺伝情報に応じた健康管理につなげることができます。