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手術支援ロボット
da Vinci(ダヴィンチ)

da Vinci Surgical System

大阪赤十字病院では、「手術支援ロボット da Vinci(ダヴィンチ)の最新鋭機Xiを用いた手術(前立腺がん・腎臓がん・膀胱がん・食道がん・胃がん・結腸がん・直腸がん・膵がん・原発性肺がん・縦隔腫瘍・婦人科良性疾患・子宮体がん)」を保険診療で受けられます!

はじめに

内視鏡手術支援ロボット(手術支援ロボットともいいます)とは、従来人間の手で直線的な機器を操って施行していた内視鏡手術(胸腔鏡手術・腹腔鏡手術)をコンピューター制御下により精密・精細に行なえるようにするために開発された、根治性(病気の治せ具合)と機能温存(生活の質の担保)というトレードオフの関係にある命題を両立できる可能性を秘めた最新鋭の医療機器です。

大阪赤十字病院では、平成28年に最新型の内視鏡手術支援ロボット da Vinci Xiシステムを導入して前立腺がん・腎臓がんに対するロボット支援下手術(泌尿器科)を保険診療として開始し、平成29年には食道がん・胃がん・直腸がんに対するロボット支援下手術(消化器外科)を保険外自由診療として開始しました。平成30年度には新たに12の術式が保険収載され(施設基準あり)、大阪赤十字病院では「食道がん・胃がん・直腸がんに対するロボット支援下手術(消化器外科)」、「膀胱がんに対するロボット支援下手術(泌尿器科)」、「原発性肺がんの肺葉切除および区域切除、縦隔腫瘍切除、重症筋無力症に対する拡大胸腺切除に対するロボット支援胸腔鏡下手術(呼吸器外科)」が、令和3年3月より「婦人科良性疾患に対するロボット支援下手術(産婦人科)」が保険診療で行な えるようになりました。

また、令和3年10月には「膵がんに対するロボット支援下手術(消化器外科)」、令和4年6月「結腸がんに対するロボット支援課手術(消化器外科)」も保険診療で行えるようになりました。

なお、消化器外科領域では「ヘルニアに対するロボット支援下手術」、耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域では「咽頭悪性腫瘍手術に対するロボット支援下手術」を自費診療で、産婦人科領域では「子宮筋腫など・子宮体がんに対するロボット支援下手術」を従来の腹腔鏡下手術と同様の費用で受けることができます。

da Vinci Xi の構成

  • 内視鏡手術支援ロボットが自分の意志で勝手に手術をするわけではありません。精密な内視鏡手術を行なうことを支援するための最新鋭コンピューターシステムであり、厳格な基準をパスした外科医にしか執刀できません。

    執刀医が操作するサージョンコンソール(コックピット)、精密な動きが可能な手術機器を装着するペイシェントカート(患者さんに直接触れて手術する部分)、コンピューターの中央集積回路(CPU)に相当するビジョンカートの3つの部分から構成されています(図1)。サージョンコンソールは患者さんから離れたところ、4本の腕を持つペイシェントカートは患者さんの傍に配置されます。執刀医が指令装置であるコンソールに座り、操作レバーや操作ペダルを操作すると、その動きはコンピューターに伝わり、さらにコンピューターは実際に手術を行うロボットの手術機器を動かし手術が進行していきます。繊細な手術機器が執刀医師の目・手・足の動きを忠実に再現するため、マスター・スレーブシステムともいわれます(マスター:主人、スレーブ:奴隷)。

da Vinciに搭載されたテクノロジー

3Dカメラによる立体視

執刀医はコンソールのメガネの部分を覗き込むことで、胸やお腹の奥深くまで3次元で観察できます。最大10倍の高倍率であり、細かい血管や神経、リンパ節なども明瞭に認識できます。

ロボットアーム技術

  • 従来の胸腔鏡手術・腹腔鏡手術では直線的な手術機器を用いるため、角度・可動域の関係で狭い空間の深部を愛護的に操作できないことがありました。手術支援ロボットでは手術機器の先端に関節が7個あり270°の可動域を有するため、執刀医の指・手の動きの通りに操ることが可能です。また、執刀医の手の震え(カメラで言う手ぶれ)が自動的に取り除かれて手術機器に伝達されます(図2)。これにより、繊細かつ正確な手術操作が可能となります。まさに執刀医は、あたかも患者さんの体内に入り込んで手術を行なっているかのような錯覚を受けます。

最新鋭器da Vinci Xi の長所;
従来の機器との比較

Xiはda Vinciシリーズの4世代目の機種で、前々世代(S)や前世代(Si)の機種と比較してさまざまな最新のバージョンアップが施されています。代表的なものとして、ペイシェントカート(患者さんの傍に設置しロボットアームに接続した手術機器を体内に挿入する)の機能が刷新されました。

  • 音声ガイダンス機能とレーザー位置決め機能が付加され安全面が充実しました。アームの首振り機能によりペイシェントカートの配置の制限が少なくなり、これらの機能の充実でより安全で迅速なセットアップが実現でき、手術時間の短縮が見込まれます。
  • 3Dフルハイビジョン内視鏡が細径化され、4本のロボットアームが細くて長くなりました。これにより胸腔鏡・腹腔鏡ポート(手術機器を体内に挿入する穴) の留置位置の制限が減り、内視鏡をどのポートからも挿入できるようになり、ロボット機器の可動域制限が改善されました。手術中に患者さんの頭を大きく下げることを回避でき、手術時間の短縮にもつながるため、より患者さんの身体に対する負担が少なく、緑内障や呼吸機能に問題がある患者さんへの適応も広がると考えられます。

da Vinciを用いた手術の実際

大阪赤十字病院で行っている「ロボット支援下手術」について説明します。がんの進行具合や合併疾患の状態によっては、ロボット支援手術以外の治療法がふさわしい場合もありますので、詳しくは担当医とよくご相談ください。

前立腺がん(保険診療)

前立腺全摘術の対象となる患者さんは、転移のない前立腺がん(限局性前立腺がん)で原則的には75歳以下、重篤な合併症のない方で、PSA(腫瘍マーカー)でいうと10ないし20以下が目安です。これまで当院で行ってきた従来の腹腔鏡下前立腺全摘術と比べて手術時間の短縮、断端陽性率(僅かながんを取り残す率)や術後早期尿禁制(尿失禁しないこと)の改善が期待されます。また、性機能をつかさどる神経を温存しやすくなり、より積極的に性機能の保持に取り組むことができます。

腎臓がん(保険診療)

腎臓は左右に1個ずつ存在する血流が極めて豊富な組織です。大きな腎臓がんでは片側の腎臓を摘出する必要がありますが、小さな腎臓がんでは腎臓部分切除術にとどめて腎臓機能を温存できる方が望ましいと考えられます。腎臓を部分切除する際には腎臓の血管を一時的に遮断した状態で腎臓内を切離して縫合する必要があります。血管を遮断する時間が長いと腎臓機能が悪化するため、極めて迅速な切離・縫合技術が要求されます。従来の腹腔鏡手術では腎臓を部分切除することが困難でしたが、ロボット支援下手術では縫合処置を安定して容易に行なえるため、腎臓の血管を遮断せずに腎臓を部分切除して腎臓機能を温存することが可能です。

食道がん・胃がん・結腸がん・直腸がん(保険診療)

これらのがんの手術では、食道や胃や直腸だけでなく、周囲に存在するリンパ節も含めて確実に切除する必要があります。切除するべきリンパ節は、食道がんの手術では反回神経(声を出す声帯の動きを調節する神経)、胃がんの手術では膵臓(膵液という消化液やホルモンなどを産生する臓器)、直腸がんの手術では肛門括約筋(肛門を締めて大便が漏れないようにする筋肉)や自律神経(排尿・排便・性機能を調節する神経)に密接して存在します。

反回神経の麻痺が起こると、声がかすれたり、むせや誤嚥の原因となったり、重篤な場合には呼吸の通り道が塞がってしまい呼吸困難となることがあります。膵臓に傷がついて膵液が漏れると、内臓の自己消化がおきて炎症を起こしたり膿がたまる原因となり、また稀ですが血管を溶かして大出血を起こすことがあります。肛門括約筋や自律神経に傷がつくと、大便が漏れたり、尿を自力で出せなくなったり、性機能が喪失したり、さらには人工肛門を余儀なくされることもあります。

より精密な手術操作を行なえる手術支援ロボットを用いることによって、これらの重要な組織を傷つけることなく確実にがん・リンパ節を切除することが可能になると考えられます。

膵がん(保険診療)

当院ではロボット支援下膵体尾部切除術を2020年12月より開始しました。日本肝胆膵外科学会および日本内視鏡外科学会の提言する、ロボット支援下膵切除術導入の施設基準を満たし、2021年10月より保険適応下でのロボット支援下膵体尾部切除術が可能となりました。

原発性肺がん(保険診療)

原発性肺がんの手術では、がん病巣を含む肺葉(肺を構成する袋)の切除と、当該肺葉周囲のリンパ節の切除(郭清と呼びます)を行うのが標準です。また、肺の末梢(体の中心部から離れた場所)に発生した小型の肺癌では、肺葉よりも小さい「区域」という単位での切除も標準的になりつつあります。現在は、手術用内視鏡を使用して小さな傷で行う「胸腔鏡下肺葉切除あるいは区域切除」が主流となっていますが、ロボット支援下の手術では、優れた性能をもつ da Vinci のカメラを用いて従来の胸腔鏡より更に精密な操作が可能であり、またロボットアームが入る穴も小さく、患者さんへの負担が少ない手術が実現できると考えられます。

但し、腫瘍のサイズや発生場所、進行度により、ロボット支援下の手術よりも胸腔鏡下の手術あるいは開胸手術の方が適切な例もありますので、詳しくは担当医にご相談ください。

縦隔腫瘍(保険診療)

縦隔とは、左右の肺に挟まれた部分で、心臓や大血管、食道、気管、椎体(背骨)などが存在します。頻度は少ないのですが、この部位に腫瘍が発生することがあります。胸腺腫、胚細胞性腫瘍、気管支原性嚢胞、神経原性腫瘍などがあります。これらの腫瘍はサイズや発生部位により「胸腔鏡下あるいは胸骨正中切開下縦隔腫瘍切除術」が行われています。しかしサイズが比較的小さく、心臓や大血管など重要臓器に浸潤していない腫瘍については、手術の傷が小さくて済むロボット支援下の縦隔腫瘍切除が良い適応となります。

重症筋無力症(保険診療)

重症筋無力症は、体の免疫の働きの異常により、筋肉の力が入りにくくなる疾病です。重症筋無力症の症状の程度にもよりますが、縦隔にある胸腺とその周囲の脂肪組織を切除する拡大胸腺切除術により、重症筋無力症の治療に寄与できる場合があります。縦隔腫瘍が合併する場合も多く、従来は胸骨正中切開あるいは胸腔鏡下で行っておりましたが、ロボット支援下の拡大胸腺切除が保険適応になりました。

婦人科良性疾患(保険診療)

2018年4月よりロボット支援下腹腔鏡下腟式子宮全摘出術が保険適応となりました。子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮頸部異形成、子宮内膜増殖症などの良性疾患に罹患されている患者さんが子宮全摘出術を希望された際、腹式手術、腟式手術、腹腔鏡下手術に加えてロボット支援下手術が選択いただけるようになりました。ロボット支援下手術は、腹腔鏡下手術と同様に創部が小さく社会復帰が早いという利点に加え、腹腔鏡下手術より繊細かつ精密な操作が可能となります。入院日数は従来の腹腔鏡下手術と同様であり、入院費用及び手術費用も腹腔鏡下手術と同様となっています。

ロボット支援下手術を希望される際には、現在の担当医にご相談いただきロボット支援下手術担当医師の外来(水曜3診 芦原医師)を受診してください。

子宮体がん(子宮内膜がん)(保険診療)

2018年4月よりロボット支援下腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮体がんに限る)が保険適応となりました。当院においても早期子宮体がん(子宮内膜がん)に対しては、根治術として子宮全摘出術、両側付属期切除術、およびリンパ節郭清術が必要となります(進行期、組織型によっては付属器切除術とリンパ節郭清術は省略することがあります)。従来は、開腹手術、腹腔鏡下手術がありましたが、ロボット支援下手術が新たな選択肢として増える事となりました。ロボット支援下手術は、腹腔鏡下手術と同様に創部が小さく社会復帰が早いという利点に加え、腹腔鏡下手術より繊細かつ精密な操作が可能となります。入院日数は従来の腹腔鏡下手術と同様であり、入院費用及び手術費用も腹腔鏡下手術と同様で対応が可能です。ただし、腹腔鏡下手術やロボット支援下手術は、進行期や組織型によっては選択いただけない場合があります。

ロボット支援下手術を希望される際には、現在の担当医にご相談いただきロボット支援下手術担当医師の外来(水曜3診 芦原医師)を受診してください。

QI(Quality Indicator)-医療の質をはかる指標-

QIとは 、 病院の 様々な 機能や 診療 行為に関する 情報を 数値化 したものです。
これらの数値 を 継続的に 評価 ・ 分析 し 改善等 を 行うことで 、 医療の質の 向上 に 努めていきます 。

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