大阪赤十字病院では、「手術支援ロボット da Vinci(ダヴィンチ)の最新鋭機Xiを用いた手術(前立腺がん・腎臓がん・食道がん・胃がん・直腸がん)」を保険診療で受けられます!

はじめに

内視鏡手術支援ロボット(手術支援ロボットともいいます)とは、従来人間の手で直線的な機器を操って施行していた内視鏡手術(胸腔鏡手術・腹腔鏡手術)をコンピューター制御下により精密・精細に行なえるようにするために開発された、根治性(病気の治せ具合)と機能温存(生活の質の担保)というトレードオフの関係にある命題を両立できる可能性を秘めた最新鋭の医療機器です。

大阪赤十字病院では、平成28年に最新型の内視鏡手術支援ロボット da Vinci Xiシステムを導入して前立腺がん・腎臓がんに対するロボット支援下手術(泌尿器科)を保険診療として開始し、平成29年には食道がん・胃がん・直腸がんに対するロボット支援下手術(消化器外科)を保険外自由診療として開始しました。平成30年度には新たに12の術式が保険収載され(施設基準あり)、大阪赤十字病院では「食道がん・胃がん・直腸がんに対するロボット支援下手術」も保険診療で行なえるようになりました。

da Vinci Xi の構成

内視鏡手術支援ロボットが自分の意志で勝手に手術をするわけではありません。精密な内視鏡手術を行なうことを支援するための最新鋭コンピューターシステムであり、厳格な基準をパスした外科医にしか執刀できません。

執刀医が操作するサージョンコンソール(コックピット)、精密な動きが可能な手術機器を装着するペイシェントカート(患者さんに直接触れて手術する部分)、コンピューターの中央集積回路(CPU)に相当するビジョンカートの3つの部分から構成されています(図1)。サージョンコンソールは患者さんから離れたところ、4本の腕を持つペイシェントカートは患者さんの傍に配置されます。執刀医が指令装置であるコンソールに座り、操作レバーや操作ペダルを操作すると、その動きはコンピューターに伝わり、さらにコンピューターは実際に手術を行うロボットの手術機器を動かし手術が進行していきます。繊細な手術機器が執刀医師の目・手・足の動きを忠実に再現するため、マスター・スレーブシステムともいわれます(マスター:主人、スレーブ:奴隷)。

da Vinciに搭載されたテクノロジー

3Dカメラによる立体視

執刀医はコンソールのメガネの部分を覗き込むことで、胸やお腹の奥深くまで3次元で観察できます。最大10倍の高倍率であり、細かい血管や神経、リンパ節なども明瞭に認識できます。

ロボットアーム技術

従来の胸腔鏡手術・腹腔鏡手術では直線的な手術機器を用いるため、角度・可動域の関係で狭い空間の深部を愛護的に操作できないことがありました。手術支援ロボットでは手術機器の先端に関節が7個あり270°の可動域を有するため、執刀医の指・手の動きの通りに操ることが可能です。また、執刀医の手の震え(カメラで言う手ぶれ)が自動的に取り除かれて手術機器に伝達されます(図2)。これにより、繊細かつ正確な手術操作が可能となります。まさに執刀医は、あたかも患者さんの体内に入り込んで手術を行なっているかのような錯覚を受けます。

最新鋭器da Vinci Xi の長所;従来の機器との比較

Xiはda Vinciシリーズの4世代目の機種で、前々世代(S)や前世代(Si)の機種と比較してさまざまな最新のバージョンアップが施されています。代表的なものとして、ペイシェントカート(患者さんの傍に設置しロボットアームに接続した手術機器を体内に挿入する)の機能が刷新されました。

da Vinciを用いた手術の実際

大阪赤十字病院で保険診療として行なっている「前立腺がん・腎臓がん・食道がん・胃がん・直腸がんに対するロボット支援下手術」について説明します。がんの進行具合や合併疾患の状態によっては、ロボット支援手術以外の治療法がふさわしい場合もありますので、詳しくは担当医とよくご相談ください。

泌尿器科ホームページ(前立腺がん・腎臓がん)
消化器外科ホームページ(食道がん・胃がん・直腸がん)

前立腺がん

前立腺全摘術の対象となる患者さんは、転移のない前立腺がん(限局性前立腺がん)で原則的には75歳以下、重篤な合併症のない方で、PSA(腫瘍マーカー)でいうと10ないし20以下が目安です。これまで当院で行ってきた従来の腹腔鏡下前立腺全摘術と比べて手術時間の短縮、断端陽性率(僅かながんを取り残す率)や術後早期尿禁制(尿失禁しないこと)の改善が期待されます。また、性機能をつかさどる神経を温存しやすくなり、より積極的に性機能の保持に取り組むことができます。

腎臓がん

腎臓は左右に1個ずつ存在する血流が極めて豊富な組織です。大きな腎臓がんでは片側の腎臓を摘出する必要がありますが、小さな腎臓がんでは腎臓部分切除術にとどめて腎臓機能を温存できる方が望ましいと考えられます。腎臓を部分切除する際には腎臓の血管を一時的に遮断した状態で腎臓内を切離して縫合する必要があります。血管を遮断する時間が長いと腎臓機能が悪化するため、極めて迅速な切離・縫合技術が要求されます。従来の腹腔鏡手術では腎臓を部分切除することが困難でしたが、ロボット支援下手術では縫合処置を安定して容易に行なえるため、腎臓の血管を遮断せずに腎臓を部分切除して腎臓機能を温存することが可能です。

食道がん・胃がん・直腸がん

これらのがんの手術では、食道や胃や直腸だけでなく、周囲に存在するリンパ節も含めて確実に切除する必要があります。切除するべきリンパ節は、食道がんの手術では反回神経(声を出す声帯の動きを調節する神経)、胃がんの手術では膵臓(膵液という消化液やホルモンなどを産生する臓器)、直腸がんの手術では肛門括約筋(肛門を締めて大便が漏れないようにする筋肉)や自律神経(排尿・排便・性機能を調節する神経)に密接して存在します。

反回神経の麻痺が起こると、声がかすれたり、むせや誤嚥の原因となったり、重篤な場合には呼吸の通り道が塞がってしまい呼吸困難となることがあります。膵臓に傷がついて膵液が漏れると、内臓の自己消化がおきて炎症を起こしたり膿がたまる原因となり、また稀ですが血管を溶かして大出血を起こすことがあります。肛門括約筋や自律神経に傷がつくと、大便が漏れたり、尿を自力で出せなくなったり、性機能が喪失したり、さらには人工肛門を余儀なくされることもあります。

より精密な手術操作を行なえる手術支援ロボットを用いることによって、これらの重要な組織を傷つけることなく確実にがん・リンパ節を切除することが可能になると考えられます。

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