赤十字のマークについて

皆さんご存知の赤十字のマーク、多くの方は、これは病院のマーク、あるいは救急車のマーク、薬箱のマークなどと思っていませんか?

残念ながら日本ではこの赤十字マークが色々なところで勝手に使用されているのを見かけますが、実はこの白地に赤い十字のマークは、世界最大の人道支援のNGOである赤十字に関係のある活動にしか使用を許されていないマークなのです。これはジュネーブ条約や日本国内では『赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律』、『商標法』などの国内法によって厳密に定められています。ですから、このマークが薬箱や赤十字以外の病院やクリニックの看板、あるいはレスキュー隊のユニフォームなどに描かれていれば、それらは全てジュネーブ条約違反なのです。

イスラム教国では赤新月と称し、マークは白地に赤色の三日月を用いていて、このマークも赤十字と全く同様に取り扱われています。

なぜ、このように厳密な使用規定があるのでしょうか。それは赤十字のマークに二つの重要な意味があるからなのです。

一つはもちろん赤十字に関係のある物や人を表す物です。一般の会社などの社標と同じです。 もう一つは戦争時あるいは紛争時に傷病者を救護する赤十字関係者、赤十字施設、軍の衛生部隊・施設等を、安全に保護するためのものなのです。たとえ戦争中であっても、この「赤十字マーク」を掲げる病院、救護員などは、中立を示すものとして絶対に攻撃してはいけないことが国際的な約束になっています。従って、赤十字マークが普段から勝手に使用されていると、我々赤十字の海外救援部隊の命が危険にさらされることになります。

赤十字マークのように国際的に保護され、全世界が共通の認識を持たねばならないマークのことを国際保護標章といいます。他の国際保護標章で皆さんがよく知っているものは、降伏を表す白旗があります。

各種条約、法律の抜粋

戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する1949年8月12日のジュネーブ条約(抄)

(昭和28年10月21日号外 条約23号)

第7章 特殊記章
第44条
本条の次項以下の項に掲げる場合を除く外、白地に赤十字の標章及び「赤十字」または「ジュネーブ十字」という語は、平時であると戦時であるとを問わず、この条約及びこの条約と同様な事項について定める他の条約によって保護される衛生部隊、衛生施設、要員及び材料を表示し、又は保護するためでなければ、使用してはならない。(後略)
第53条
公のものであると私のものであるとを問わず、個人、団体、商社又は会社でこの条約に基づいて使用の権利を与えられていないものが、「赤十字」若しくは「ジュネーブ十字」の標章若しくは名称又はそれを模倣した記章若しくは名称を使用することは、その使用の目的及び採用の日付のいかんを問わず、常に禁止する。(後略)

赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(抄)

(昭和22年12月10日法律第159号)

赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律をここに公布する。
第1条
白地に赤十字、赤新月若しくは赤のライオン及び太陽の標章若しくは赤十字、ジュネーブ十字、赤新月若しくは赤のライオン及び太陽の名称又はこれらに類似する記章若しくは名称は、みだりにこれを用いてはならない。
第2条
日本赤十字社は、前条の規定にかかわらず、白地に赤十字の標章及び赤十字の名称を用いることができる。
第3条
傷者又は病者の無料看護に専ら充てられる救護の場所を表示するために、白地に赤十字、赤新月又は赤のライオン及び太陽の標章を用いようとする者は、日本赤十字社の許可を受けてこれを用いることができる。
第4条
第1条の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は300,000 円以下の罰金に処する。

商標法(抄)

(昭和34年4月13日号外 法律第127号)(商標登録を受けることができない商標)

第4条
次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。 (4) 赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(昭和22年法律第159号)第1条の標章若しくは名称又は武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)第158条第1項の特殊標章と同一又は類似の商標。